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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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ました!』
了解の声を聞いて、蔵馬は通話を切る。
蔵馬がいるのは厚木警察署の西にある市街地だ。そして小学校は警察署の北東。なかなか距離があるが、相手がヤクザであるならモモなら持ち応えるだろう。
いくらなんでもチンピラ紛いのヤクザ程度にやられる義体ではない。手足を適当にぶん回せば人を殺せるくらいの性能は潜在的に持っているのだ。
ともかく、モモがヤクザを引き連れて走り回っている間に警察署の駐車場に停めてある車に戻り、モモと、一緒にいるらしい斎藤美希を拾ってとっとと逃げよう。
蔵馬は息を大きく吸って、脚に力を込める。そして、厚木の街を駆け出した。
モモたちは厚木中央公園を抜けて、蔵馬が指定した小学校が視界に入る場所までやって来た。
後ろのヤクザはいつの間にか倍の六人に増えている。揃いも揃って神社に敷かれた狛犬のような獰猛面だ。
「あいつら、なん、なの……!」
美希は嗚咽と呼吸が混ざり合った息で、涼しい顔のまま走り続けるモモに問いかけた。
「ヤクザさんだそうです」
「ヤク、ザ……? 何で、私たち、を、追って、来てるのよぉ!」
息も切れ切れになって泣き言を言う美希は、その足の回転も落ちて、半分モモに引き擦られるような形になっていた。
彼我の距離もまた縮まって、残り数メートルだ。ヤクザの眉間の皺まで見て取れる。
蔵馬は走り続けろと言ったが、苦しそうに走る美希の様子からは、これ以上の逃走は難しそうだ。
進む路の先に駐車場を見つけ、モモはその中に入って行った。
寒風吹く夕方の駐車場には運よく人気が無い。一戦交えるにはちょうどいい場所だ。後ろを取られないように駐車場を奥まで進み、ようやく美希の手を放した。
「おっ……追いついた……このゴリラ女がぁ!」
開口一番、軽薄な上に失礼な男だった。
ヤクザ達もぞろぞろと駐車場になだれ込んできた。運動不足か煙草の吸い過ぎか、彼らの息づかいは女子高生の美希にも劣らぬほど荒い。
六人の男たちは息を整えながら、モモたちを取り囲むようにして扇状に広がった。
その中心、モモと向かい合うのは軽薄男だ。彼が男たちのリーダーなのだろう。
「何なんですか貴方たちは」
「うっせ……いいからその娘っ子を渡せ……! じゃねえと大阪に帰れねえだろうが……!」
「私だって美希さんを探していたんです。連れて帰らないと私たちが怒られるじゃないですか」
「へ……? モモ、何それどゆこと……?」
駐車場の砂利の上にへたり込んだ美希は、汗を顎から滴らせながらモモを見上げる。
状況の説明をしてもいいのだろうか。今更隠しても無駄な気もするが、その辺の判断は蔵馬に任せよう。
ともかく今は、美希を守る。
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