第3話 燻り
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げと見つめていると、遠沢は一度聞いた事のある声を聞いた。
「あ、それ、預かります」
遠沢が振り返った先には、バグラムからこちらに来るときに自分を運んでくれた陸軍航空隊のパイロットが居た。垂れ目で、少しひ弱に見えるそのパイロットの名前は、確か仲嶋と言った。遠沢は黙って、手に持った欠片を仲嶋に渡した。
「しばらくぶりですね。少々日に焼けたようで。暑いでしょ、ここ?僕も参ってるんですよ、もう1年以上になるんですけどね。いや、慣れないものです」
にこやかに話しかけてくるその顔は、陸軍の略式制服よりかは、交番の駐在さんの格好が似合っている。よくこんな危険な所に、場違いな顔をした人が居るものだと少し遠沢は呆れた。
「……それ、ロケット弾の破片でしょう?」
「あ、ええ……さすがだなあ、分かるんですか」
「被害は出なかったんですか?」
会話がイマイチ自分のノンビリとしたペースで進まない事に肩をすくめながら、仲嶋は基地の中央にある楕円形の建造物を指差した。
「あれ、光波防壁って言うんですよ。レーダーにロケット弾やミサイルのような飛来物が飛んできた瞬間、その方向に幕のように広く展開したエネルギー場を作って、物理攻撃を排除するんです。昨晩もあれが仕事をしましたね。よって負傷者すらゼロですよ」
遠沢は仲嶋が指したバルスタン基地の守り神の威容を目に焼き付けた。
(陸軍はこんなモノまで持ち込んでたの……治安が極度に悪い土地とはいえ……)
「でもあれ、飛来物にはだいたい反応しちゃうんで、下手すると僕らの乗るティルトローターもあれに弾かれちゃうんですけどね」
にこやかに話す仲嶋の声は、遠沢の耳にはもう入っておらず、その視線は光波防壁にじっと注がれていた。
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