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命の荒野
第3話 燻り
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構築を目指しており、他国の共産主義勢力の支援を受けている。宗教の宗派も国内での多数派が多く、宗派的には少数派の王族が国を仕切っている事への不満を吸収しながら拡大しているが、それでも既に一度失敗している共産主義を主張の根本にしている事や、また血気盛んな若者インテリが多く過激な行動も目立つ事から、もうひとつ革命成功までは遠い。後者は、10年前にアザディスタンに武力制圧され併合されたクルジス共和国の再独立が狙いで、旧共和国軍の生き残りなどが主体となっている。現在アザディスタンと国境に面している周辺国からの支援を受けているらしいが、それはアザディスタンに内乱を起こしていつまでも弱体化してて欲しいという狙いが見えない事も無い。この二つの勢力同士でも小競り合いはしょっちゅう起きていて、アザディスタンの情勢を更に混沌とさせていた。

そもそも、中央政府がぐらついているのが全ての元凶で、クルジス共和国勢いで攻め落としたまでは良かったが、王が死んでからの王位継承争いは現在に至るまで続くくらいぐちゃぐちゃで、いつまで経っても暫定政権から脱却する気配がない。だからこそガス田開発も自分ではままならず、おかげで日本がバルスタン鉱区を手に入れる事が出来たのであるが、今の自分の仕事がそんな事情の元に成立していると考えると、松見としては複雑な気持ちにならざるを得なかった。

「何か、気になる所がおありですか?」

そんな松見の表情から何かを感じたのだろうか、遠沢が尋ねる。松見は苦笑いでそれに答えた。

「いえ、気になると言いますか……やはり誰かが知らないうちに私達に殺意を持っていて、だからあのようなモノを私達に打ち込んでくるわけでしょ?恨まれて、それが気持ち良くは無いですよ。」

遠沢はそれを聞いて、口を真一文字に結んだ。そして、窓の外に広がる荒野を眺めながら言う。

「……誰かに恨まれる事なんて、珍しい事でもありません。中東の荒野でも、東京の摩天楼の中でも、それこそどこにでも起こり得る、日常茶飯事です。人が集まればその分軋轢は生まれます。気にしていたら……保ちません」
「……あなたは強いのですね」

松見も遠沢と同じ景色を見た。風が涼しげにではなく、熱を伴って吹きすさぶ、日差しが片時も休まる事なく生命を焦がす、それはそれは厳しい光景だった。その中に、自分達をはじめ、人間が住んでいた。


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「……」

遠沢が基地の中を歩いていると、足下に金属片があるのを見つけた。煤に汚れて、少し黒くなっているそれは昨晩打ち込まれたロケット弾の残骸で、今でこそただの欠片だが、これが爆発の勢いですっ飛んで来たら、人の体を傷つけることくらいは容易である。拾った欠片をしげし
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