第三章
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で顔を赤らめさせていた。
「だから。こうして」
「お菓子で」
「ええ。潤一君お菓子が好きだって聞いたから」
「じゃああのお菓子は僕を誘う為に?」
「それもあるのは本当よ」
それは素直に認めた。
「けれど。それだけじゃないわ」
「それだけじゃないって」
「美味しかったでしょ?」
潤一の方を見て尋ねてきた。
「私のお菓子」
「はい、それは」
そのことは素直に頷くことができた。
「凄く。とても美味しかったです」
「そう言って貰えるのが嬉しかったから」
彼女は言う。
「少しずつ。そう思えてきたのよ」
「そうだったんですか」
「それでね、潤一君」
顔は赤いままだったがその赤が変わっていた。大人の赤から少女の赤に変わっていた。それは潤一が今まで見たことのない洋香の顔であった。その顔を見て彼は胸の奥の何かが大きく動いたのを感じた。
「これからも。作っていいかな」
「お菓子を」
「ええ。他のも作れるけれどやっぱりお菓子をね」
少しモジモジした様子になっていた。今までとは全然違っていた。
「いいかしら」
「はい」
潤一はその申し出を断ることはなかった。
「僕からもお願いします。是非」
「いいのね」
その言葉を確かめる目になっていた。それはやはり少女のものであった。
「本当にそれで」
「だって。僕も」
潤一は勝負に出た。
「洋香さんのこと好きですから」
「えっ」
「洋香さんのお菓子これからも食べたいです。いいですよね」
「悪いわけないじゃない」
洋香の顔が笑みに変わった。にこやかな笑みに。
「だから作ってるのに」
「それじゃあ」
「ええ。これからも宜しくね」
「はい」
潤一も笑顔になった。その笑顔で頷く。
「じゃあ今度は」
「何がいいのかしら」
「洋香さんの作ったものなら何でも」
「あら、言うわね」
それでも言われて悪い気がしないのも事実だった。
「じゃあまた今度ね。といきりのを作ってあげるわ」
「うん」
潤一はベッドの中で頷いた。お菓子ではじまりお菓子が結び付けた恋だった。甘い誘いが甘い恋に成就した。そんな話であった。
甘い毒 完
2006・10・13
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