“渇き”の乱入
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嘘だったかのように消え失せている。
余りの出来事に場に居る全員が立ち尽くす中、森林の中から青年のものらしき、何者かの声が掛けられた。
「……渇きも癒せないな。有象無象、雑魚大群、一騎当千はこんな容易い戦いの先には無い筈なんだが……まあ、それは俺の考えか」
「何奴だっ!!」
ドラグギルディが目線を向けた先、木々によりつくられた暗がりの中から現れたのは……右手が刃物の付いた異形となっている、髪の毛が逆立ったガスマスクを装備している、拘束衣姿の長身の青年だった。
彼がそこに現れただけで、テイルレッドとテイルブルーは体を締め付けられるような息苦しさに襲われる。
彼等を見回して、青年はため息を吐いた。
「……グラトニーの方がまだまだマシか。この程度ならアイツ一人でもやれる」
「ぬぅぅ、貴様、只者では無い―――」
ドラグギルディが口を開いた瞬間、青年の右腕の位置が真横から真正面に変わった。
それと同時にドラグギルディは黙りこみ―――――青年へ向けたその台詞を最後まで言い切ることなく、グラトニーがギャラリーの前に現れた日のトタスギルディの如く、音も無く真っ二つとなって大きな音を響かせ倒れてしまった。
もの言わぬ屍が転がり、ドラグギルディの手にしていた大剣が、音を立てて地面に落下する。
余りにアッサリすぎる結末、情けない程あっけないその結末に、テイルレッドもテイルブルーも呆然と立ち尽くすのみ。
「……え? ……へ? あ、あいつ、死んだの? 殺されたの? ……えっ?」
「あ、あ……あっ……呆気なさ、すぎる……」
『嘘……嘘ですよ……あの戦闘員の大軍隊が……最強たるツインテール属性を持つあのドラグギルディが……こんなにも簡単に……』
場に流れる空気に構わず、青年はドラグギルディから流れ出したオーラを手に取ると、掌大に固めて何処かへ放り投げ、残りは彼自身がガスマスクの牙部分から残らず吸い込んだ。
最後に残った属性玉をツインテイルズの方へ投げると、青年はあらぬ方を向いて静かに一言だけ呟く。
「……侘びはした。元からそのつもりだが、後は好きにやらせてもらう」
それだけ言うと、テイルレッドやブルーにはもう眼も暮れず、中に黒と灰色の濃淡が広がる空間を開いて飛び込み、去って行ってしまった。
後には、ただ黙って立っているしかできない、テイルレッドとテイルブルー、そして安全地帯から出てきたトゥアールのみ。
こうして、一人の少女の無念を晴らす為の、この世界の命運をかけて挑んだ筈の勝負は、予想外な形で最後を迎えるのであった。
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