Episode33:負けられぬ戦い
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にあるテーブルにコーヒーの入ったカップを置く。
「確かにギリギリでしたが、一条選手に勝てたというのはとても大きいです。よくもまあ、あんな無茶苦茶をやってくれました」
「…あの一斉攻撃は市原先輩が隙あらば狙えって言ってたやつですけど?」
「はてなんのことでしょう」
しらばっくれる気だこの人。
首を傾げて惚ける先輩に隼人は白い目を向けるも、当の本人はそんな事を気にせず話を進めた。
「それはそうと九十九さん、あれは一体なんなのですか?」
あれ、とは勿論のこと隼人が使ったあの『炎弾』のことだ。事前の打ち合わせで、彼は古式魔法が使えるとは言っていなかった。
ならばあの炎弾はなんなのか。そして貴方は一体、何者なのか。
「……あれは精霊魔法ですよ。俺の友達に精霊魔法を使う人がいて一時教わっていたんです。今回は一条くんを驚かせる程度の効果を期待してたんですけど、予想以上の働きをしてくれました」
まず古式魔法は少し教わった位で習得はできないというツッコミを飲み込むことにする。
だがまあ、それならば良い。鈴音自身も、可愛がっている後輩がアレの関係者であって欲しくはないのだから。
そうして鈴音は、隼人に感じた違和感から無理矢理目を背けることにしたのだった。
「そうですか…兎も角、今日はお疲れ様でした。明日からすぐにモノリス・コードが始まりますので、今日はゆっくり休んで下さい」
「了解です。市原先輩、ありがとうございました!」
頭を下げる後輩に微笑んで、鈴音は思考に蓋をする。
わざわざ忌まわしい記憶を掘り返すことはない。彼はまだ、あの少年だと決まったわけではないのだから。
† †
「ああ、一条は、負けた。まあ、あの九十九、隼人によく、戦ったと、いうところ、だろう……」
深夜、ホテル裏の林にて。
「ああ、あまり喚く、な。貴様らの、金切り声は耳に、響くん、だ」
独特なイントネーションで、彼は通信端末越しに今回の契約者に報告をしていた。
「わかっている、さ。契約、だからな。一高の好きには、させん」
交わされるは負の密約。
ゆっくりと蛇の毒牙が、迫っていた。
ーーto be continuedーー
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