Episode33:負けられぬ戦い
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か早く一触即発のこの二人を止めて下さい。
☆★☆★
ほのかの願いが通じたのかどうかは不明だが、隼人と将輝の試合は最終局面を迎えていた。
互いに限界が近いのだろう。額には汗が滲み、時折表情を険しく歪めている。
だがそれでも魔法を放つ手を、そして意識を手放さないのは背負った思いがあるからだろうか。
自分は無力だと嘆いた少女の為に。
逆転を願う仲間たちの為に。
互いに譲ることなどできない思いがあるからこそ、己が勝つと信じて吼える。
頭に走る痛みを無視して放たれたムスペルスヘイムが、灼熱の業火となって将輝の残り一本の氷柱を溶かし始める。
ふらつく足に鞭を打って発動した爆裂が情報強化ごと食い破らんとその氷柱を軋ませる。
「終わりだ!」
将輝が放ったのは自信が最も信頼の置く『爆裂』ではなく、極限まで圧縮した空気弾。それが氷柱にぶつかれば、爆裂によって亀裂の入った隼人の最後の氷柱は間違いなく砕け散るだろう。
勝利を確信した笑みが漏れた。
俺はあの魔王を打ち破ったのだと、まだまだ自分たちは逆転できるのだと、諦め掛けていた自校に期待が満ちる幻想を見てーー
「そうだね、終わりにしよう」
ーーそしてそれは、緑の極光に呑まれた。
☆★☆★
かつてない程に巨大な緑の閃光が、最後の氷柱を一瞬で蒸発させた。
試合を終わらせた最後の魔法、その輝きの美しさに、将輝は声を出すことができなかった。
「ーーーーっ」
これまで、魔法に美しいなどという感想を抱いたことがあったであろうか。戦場に立ち、そして敵を屠り続けてきたこの魔法に。
否、有るはずがない。将輝にとって魔法とは敵を斃す手段。銃や剣などと同類の道具だ。
道具に美しいも醜いもない。有るのはただ、敵を斃せるかどうかのみ。
だがしかし、隼人の放ったフォノンメーザーの輝きに、将輝は『美しい』と思った。見惚れていた。
膝から崩れ落ちる。ああ、負けた。完全敗北だ。しかし、負けたというのに気分は不思議とスッキリしている。きっと自分の持てる全てを出し切ったからだろう。負けたのにいっそ清々しい。
観客達の歓声が聞こえてくる。万雷の喝采の中、将輝はゆっくりと櫓から降りていく。
「一条将輝!」
その背にかけられた思いもよらない声に振り返ると、向こう側で自分を打ち果たした魔王が手を振っていた。
「楽しかった! またやろう!」
「ーーーーー!」
楽しかった。ああ、そうだ。確かに楽しかった。彼との試合
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