Episode33:負けられぬ戦い
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よる佐渡侵攻事件において、『爆裂』により多くの敵兵を屠り、そしてその『敵と味方の血に塗れて戦い抜いた』ことへの敬意を表して『クリムゾン・プリンス』の渾名を賜っているのだ。
しかし爆裂を発動させるには氷柱の内部に液体が必要だ。急ピッチで作り上げられた粗悪な氷とはいえ、それは個体。いきなり爆裂を使うことはできない。
そのため、将輝は隼人に気づかれないよう微弱な振動魔法を試合開始直後から氷柱に掛け続けていたのだ。開始直後の苛烈な攻撃もこれを隠すため。
紫道聖一の作戦だけでは心許ないと考えた吉祥寺からの提案である。
弱い振動とはいえ長い間掛け続けていればいずれ効果を発揮するもの。
そして今、切り札を使うのに相応しい舞台が整った。
「なるほど、魔王というのは伊達ではないな」
確かにあの一斉攻撃は肝を冷やした。あの炎弾だって未だに理屈は分からない。
しかし、勝てないわけではない。
現に彼の氷柱は残り後列の四本、対し将輝の氷柱は懸命の防御もあって中列後列合わせて五本残っている。
そして、爆裂の準備も整っている。チェックメイト、魔王の伝説はここまでだ。
「ーーああ、楽しくなってきた」
しかし魔王は笑ってみせた。野性的で、好戦的な獣の笑み。魔法を惜しみ無く放つ事が楽しいと、将輝と戦うのが楽しいと魔王は笑う。
「だから簡単に終わらせはしないよ、クリムゾン・プリンス」
再び、残り四本の氷柱に情報強化が施される。今度のは先程よりも氷柱の数が少ない為に、その分一本一本にかかる情報強化はかなりの密度だろう。それを貫くのは例え将輝の爆裂でも容易ではない。
「君が切り札を切ったというのなら、俺もそれに倣うとしようか」
「敵の切り札が出てくるまで待つような殊勝さは持ち合わせていない!」
かつてない程に強固となった氷柱に爆裂を発動するが、やはり内部の液体は気化することなく氷柱は元の形を保っている。
(さあ、証明しよう)
隼人が燕尾服のホルスターから取り出したのは、雫から受け取った拳銃タイプの特化型CAD。雫用に調整されているはずだが、隼人に限っては問題ない。なにせ、彼がCADに合わせればいいのだから。
「君の魔法は無力じゃないってことを!」
放たれたのは緑光のレーザー。超音波振動を極限まで引き上げられた音の閃光は、情報強化を施された将輝の氷柱を一本を貫通し二本を一瞬で溶かし尽くしてみせた。
(くっ、フォノンメーザーか…! まさかここまでの威力とは思っていなかった!)
雫の魔法が無力ではないと証明すると宣言したが、勿論、隼人と雫の地力の差はある。今の雫ではここまでの威力
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