暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋の日常はありふれていて、人間臭いものである(後)
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。だって君は無意識に組織の力を利用しようと考えているから――」

 「大河内」

 そのとき大河内とケンジの空間に第三者が割り込んできた。これまで一言も喋らず二人の会話を見届けていた法城だ。しかし普段の楽天的な調子はどこにも無く、同僚に対し戒めの言葉を吐き出す。

 「ケンGは真面目な人間なんだから、例え殺し屋の仕事であっても『仕事』だと意識するのは当然だろ。俺は何も、こんなしみったれた話をさせるためにケンGを呼んだんじゃないよ?」

 「ああ、うん。ごめん。暁君も、ちょっと言い過ぎたよ。ごめん」

 素直に詫びる大河内に、ケンジは無理して作った笑みを顔に貼り付ける。

 「いや、大河内さんは正しいことしか言ってないんですし、謝る必要は……」

 「そんなことないさ。僕も大人らしくない態度で悪かったと思う。でも、これだけは言わせてくれ」

 大河内はいつになく真剣な顔つきでケンジを見て、忠告の言葉を口にした。

 「君はまだ学生だ。それに真面目で礼儀正しい。復讐なんて言葉とは不釣り合いだ。今ならまだ表側に戻れる事だけは考えてほしい」

 「……そうですね。ありがとうございます」

 それからは取り留めのない話をして時間を潰した。注文した料理を食した後、再び雑談に花を咲かせ、ようやく朱華飯店を出た時にはすでに夜を迎えていた。人工的な明かりが星々の輝きを打ち消し、空は末端まで漆黒に覆われている。この世界が黒い板で閉じ込められているような圧迫感すら覚えた。

 「ケンGはこの後もヒマ?」

 時刻は18時を回り、夕方よりもさらに人混みが膨れ上がっている十字路。その中でも比較的に空いている場所で法城がケンジに問い掛けた。ケンジは携帯で時間を確認してから「はい」と答えた。

 「よし、じゃあこれから一緒に遊びに行こう!」

 「え、遊び?」

 意気揚々と叫んだ法城のテンションとは反対に、目を点にさせて驚いているケンジ。対象的な二人を見て、大河内が爽やかな笑みを湛えながら言った。

 「ああ、遊びじゃないよ。これから向かうのは……」

 と、彼が説明しようとしたところで、法城が「あ」と口をポカンと開けたまま西門通りの方を見た。そんな彼の視線を追って二人もそちらを見てみるのだが――ケンジもその先にいた人物を見て「あ」と呟いてしまった。

 西門通りから歩いてくる制服を纏った女子高生。猫に似た丸っこい目、陶器のように染み一つない肌、茶髪のナチュラルボブ。身長はケンジと同じか少し高いぐらいで、スラリとした体型がそれらの特徴をさらに引き立たせている。

 そんな垢抜けた少女が、中華街のど真ん中を闊歩していた。周りからは当然の如く視線を浴びており、彼女はそれすらも自身の魅力として受け入れている。まる
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