暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋の日常はありふれていて、人間臭いものである(後)
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を先に置き、それから座布団に腰を下ろした。電車でも座れず、常時立ちっ放しだったため疲れがドッと押し寄せてきたのが分かる。まもなく宇春がおしぼりとお冷を運んできてくれたので、渇いた喉をお
冷
(
ひや
)
で潤した。
「暁君は今の生活をどう思っているんだい?」
突然大河内がケンジにそう言った。首をこちらに向け、全てを慈しむように優しい表情を浮かべている。嘘を吐いても見透かされると思うぐらい真っ直ぐな目を見て、ケンジは慎重に言葉を選びながら話した。
「僕はその、人殺しです。それなのに普通の生活も両立出来ている。それが何だか不思議な感じ、です」
「うん、そうだろうね。組織の力は関係者の身を守ってくれる。そうでなければ今頃みんな牢屋だしね」
「はい」
「じゃあ君は、この生活に『慣れ』を覚えたってことかな?」
「え?」
「何の変哲もない高校生活を送る一方で人を暗殺する仕事を繰り返す毎日。いつしか君にとって殺し屋の仕事は日常の一部になっているんじゃないのかな?」
「……!」
「図星、って顔だね」
フフッと柔和な笑みを形作る大河内。その顔に殺し屋のように狂気じみた気配は感じられない。しかし、彼が発する言葉一語一語はケンジにとって鉄屑のように重みのあるものだった。
何も言えなくなったケンジをよそに、大河内は淡々と言葉を紡いでいく。
「僕は別に否定する気ないよ。だって、それは人間として当たり前だから。日々を重ねる中で『慣れ』は必ず生まれる。僕ら、そして君の場合は慣れる対象が歪だけどね」
「……」
大河内の話に耳を傾ける事にしたのか、ケンジは黙って彼の話を聞いている。大河内は料理のメニューを見ながら、少しだけ尖った言葉を突きつけた。
「でも、人を殺す大本の理由がどうあれ、君がプロの殺し屋である事実に変わりはないんだ」
「え……?」
「気付かなかったのかい?君は『復讐』という理由でこの世界に来たけど、今はもうただの人殺しで、殺し屋統括情報局に所属する殺し屋なんだ」
今までとは違う意味で沈黙した少年に、殺し屋らしくない殺し屋はなおも笑顔のまま話し続ける。
「もしかしたら、君は僕が今言った事を前に忌避したかもしれない。けれど、少し遅かったみたいだ。この数日間、仕事が来なかったのを君は意識したかい?それは君が人殺しを受け入れたっていう何よりの証拠だよ」
「っ!」
隣でケンジが息を飲んだのが伝わる。店内は常に何かしらの生活音で塗れているのだが、彼らを取り巻く空間だけは別世界に変化していた。
「君は自分で『殺し屋の電話番号』について調べた事はあるかい?」
「え?ええと、その、ないです……」
「だろうね
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