明け方の少女の心に
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な軍師は、泣いていた。
「現実は醜悪よ、朔夜。自分の行いを知りなさい。策を出して人を殺している。策を出して味方を死なせている。私達は等しく殺し合いのただ中に立っている」
物憂げな瞳は何を思うか。合わされたアイスブルーは冷たい輝きを持たず、ゆらゆらと揺れている。
彼に測りかねる悲哀の色が、見て取れた。
「ねぇ徐晃? 教え方を間違えてはダメよ。この子はあなたとは違うの。あなたの在り方は……言うならば偽悪だけど、この子の在り方はそうじゃない」
「……偽悪か」
「そうよ。あなたの在り方は私とも違う偽悪。他の者や自分自身から見れば偽善。泡沫の夢に憑りつかれた大嘘つき。私の行く覇道を理解しているのならだけれど」
「なら、朔夜は?」
「それは主であり兄であるあなたが見つけてあげるべきでしょう? この子に世界がガラクタじゃないと示したいのなら、ね」
もう既に、悲哀の色は見えなかった。在るのはただ、楽しげな試すような視線だけ。
――ああそうかい。お前さんはそうやって、たった一人で自分を高めてきたってのか。道を踏み外しそうなモノに、人を説いて聞かせながら。
戦という限られた状況で、華琳のそういった部分を知れたのは秋斗にとって僥倖だった。
悲哀の意味も、僅かにだが理解出来た。覇王は、誰よりも人であり、誰よりも人を外れているのだと読み取る。誰よりも人を愛し、誰よりも世を変えたいと願っているように見える。
彼女はそれを外に決して出さないだけではなかろうか、とも。
「曹操殿には敵わねぇな……」
予測して見れば、自然と口からいつもの言葉が零れるのは彼には当然で、嘗ての自分が同じモノを目指していたのも頷けた。
「今更過ぎ。そう思うならもう少し敬意というモノを持ちなさい」
「……元譲が出たぞ。朔夜、しっかり見てようか。……尊敬してるってだけ言っておくよ、曹操殿。いつもありがと」
するりと躱した彼は、常套手段のぼかしを使う。
呆れのため息を付く華琳ではあるが、素直ではないやり取りにはもう慣れた。まだ戦場故に、意識をそればかりには向けられない。
例えこの戦場が、両軍の思惑が乗せられた結果必定のモノだとしても、この場所では人が死んでいる。名も知らない彼らが生きた証を心に刻まずして、華琳がそう在らんとしている覇王には足りえない。
背中を優しく叩かれた朔夜は、ぐ……と唇を引き結んで彼の腕の中、恐る恐る戦場を見やった。
親しい誰かが死んでしまう妄想、凄惨な悲劇の想像……大切になり始めたモノ達を失うのは恐ろしくて、それを他人に押し付けたくないのが普通の人。
――人を殺すとは、誰かの大切を奪うという事。それを恐ろしいと怯えても嘆いても突き進むのが秋兄様で、それを悪と理解しながら必要な事と割り
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