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三つのプレゼントの恋
4部分:第四章
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くいったのに」
「そこで運を使い切っちゃったかしら」
 今度は苦笑いになった。
「そのせいかしらね」
「運なの」
「そうだと思うわ」
 どうやら普段はここまで悪くはないらしい。だからこその言葉であろう。
「そうなの」
 信吾はそれを聞いてあることを思いついた。丁度そこで美智子のコインが終わってキャッチャーが止まってしまった。丁度いいタイミングと言えばそうなる。
「あのさ」
 そのタイミングに入ってきた。
「何?」
「これ」
 そして紫の箱を出してきた。それをそっと彼女の前に出してきたのだ。
「ほら、誕生日だったよね」
「ええ。けれど」
 ここはゲームセンターである。もっとムードのいい場所で渡して欲しいと思ったのだ。
「あの」
 それでそれを言おうとする。だがここで信吾は言った。
「中、開けてみて」
「ここで?」
「うん。ここで」
 彼は言う。
「受け取ってよ。お願いだから」
「ううん」
 首を傾げて眉を顰めさせる。あからさまにいぶかしがる様子をしてみせるがそれでも信吾は勧めてくる。それが執拗でさえあった。
「いいからさ」
「わかったわ。じゃあ」
 渋々ながらその箱を受け取った。そして中を開けると。
「あっ」
 出て来たのは何とインカローズの指輪であった。幸運を招くと言われているあの宝石である。これのことは美智子もよく知っていた。
「あの、信吾君これ」
「うん、たまたまだったんだ」
 信吾はにこやかに笑ってそれに答えた。
「最初はね、何を買おうかと思ったんだ」
「そうだったの」
「それでたまたま買ったんだけれど。今運に見離されてるって言うから」
「私にくれるのよね」
「最初からそのつもりだよ」
 彼は述べた。
「僕だってもっとムードのあるところで渡したかったけれどさ。でも」
 優しい笑みになっていた。
「今運がないっていうからさ。それで」
「そうだったの」
 話を聞くとその心遣いを深く感じた。
「それだったらいいよね」
「ええ」
 その心遣いだけで充分に思った。だが受け取らなければ悪いと感じたので受け取ることにしたのだ。
 指に嵌めてみる。するとその淡い赤がやけに映えて見えた。
「どう?」
「奇麗ね」
 何か普段見るよりもずっとそう感じた。
「何か。見ていて落ち着いてきたわ」
「そうなの」
「ええ。だからね」
 笑顔で信吾に言う。
「すぐにやってみるわ。運を貰ったから」
「うん、やってみて」
 そう言った美智子を後ろで見守ることにした。美智子はすぐにゲームを再開した。
「あのさ」
 ハンドを操りながら信吾に声をかけてきた。
「何?」
「ぬいぐるみ捕まえたらさ」
「うん」
「信吾君にあげるね。今日捕まえた分もこれからのも」
「いいの?
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