暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
田村要はいつだって自分を見失わない
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だけでどうしてこんなに神経を尖らせなければならないのかと思うが、話を進める以外に道はない。要はケンジの後ろ姿を見ながら言った。
「暁はイジメられた経験とかある?」
「え?」
「人から
貶
(
けな
)
されたり、私物を取られたり集団で殴られたり、そんなこと」
頭に浮かんだネタを例として挙げていく要。これには別段意味はない。ただ、相手の気分を悪くさせようとして思い付いただけだ。
――こんなんじゃ八つ当たりにすらならないよな。俺もまだまだガキだよ、ホント。
始末の負えないもどかしさを他人にぶつける自分が小さい人間だなと思いつつ、彼はケンジの答えを待った。数秒後、彼はこちらを向かずに言葉を紡いだ。
「イジメられたことはないよ。むしろみんな、僕から距離を取ってるかな」
「距離?」
意外な回答に思わず言葉を返すと、こちらに背を向けたままのクラスメイトは柵に肘を突いた姿勢で話を続けた。横から少し強めの風が吹き、互いの制服が不規則にはためく。
「小学生の頃からそうなんだ。僕は普通に接してるつもりだったんだけど、みんな表向き笑顔で、実際はそこまで強い関係性はなかった。まあ、幼馴染の女の子はいつでも一緒って感じだったけど」
そこで彼は横浜の街を背にして、要と目が合うと困ったように笑った。その姿は儚げで、どうしようもなく悲哀に満ちていた。
*****
ケンジが去った後の屋上。ブレザーが無いと鳥肌が立つ冷たい風に髪を遊ばせながら、要はベンチに座って呟いた。
「あいつは、俺に似てる」
暁ケンジが垣間見せた過去の一面。あまりにも大まかな話だったが、言われてみると頷ける内容だった。事実、今のクラスで彼がクラスメイトと行動しているのを――無論、要が常にケンジを観測しているわけではないが――あまり見た事がない。誰もが『優しくてお人好し』な人間である事を知っているのに、彼と仲をさらに深めようとしている者はいないように思える。まるで自分のときと同じように。
――普通に接してるつもりだけど、か。思いっきり昔の俺と一緒じゃん。
あのときケンジが浮かべた顔を思い出しフッと笑うと――彼は無表情に険の色を含めて呟いた。
「……じゃあ、お前も変われよ。いつまでも待ってたって何も変わらないんだから」
その言葉は風に乗って虚空へと飛んでいき、誰の耳にも届かない。浅い息を吐き、要はボソッと「帰るか」と独りでに呟き、ベンチから立ち上がろうとしたのだが、身体は鉛のように重い。ああ、と彼は考える。
――確かに似てるけど、あいつは俺より大人だ。どんなに理不尽なことでも目を逸らしていない。諦めることで前に進めてる。俺みたいにどこまでも突っ走ろうとしてない。
――それ
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