暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋の日常はありふれていて、人間臭いものである(前)
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り1000円クラスしかないのかと思ってた……。

 透明なカバーで保護されたメニューに書かれている料理はどれも高価で、一番安い料理で2100円。値段が張る料理になると10000円は軽く越す。これが本場の中華なのだと実感しながら料理を選んでいると、突然耳元で誰かに(ささや)かれた。

 「……ご注文はお決まりになりましたか?暁ケンジくん」

 「うわっ!?」

 自分がメニューに夢中になっていたのか、それとも相手が気配を消して自分の隣まで来ていたのか。ケンジは身体を飛び上がらせながら法城の方へ身体をのけ反らせていた。その様子を見た宮条が呆れ混じれに言葉を紡ぐ。

 「客を驚かせる店員ってどうなの、宇春(ユーチュン)

 「ゆ、ゆーちゅん?」

 ケンジが疑問形で呟くと、目の前にいるチャイナドレスの女が妖艶な笑みを顔に浮かべて、恭しく自己紹介をした。

 「初めまして。朱華飯店の店員やってる(シュ) 宇春(ユーチュン)です。よろしくねぇ」

 大人の魅力をあちこちから振り撒く彼女にドギマギしながらケンジも名乗る。しかし直後にもう一つの疑問が発生した。

 「あの、なんでユーチュンさんは僕の名前を知ってたんですか?」

 「前に狩屋くんから聞いたの。うちに新人が来た、って」

 「なるほど……」

 もしかして、ここは殺し屋の行きつけなのではないか。そう考えると近くで酒を煽っているサラリーマン達が滑稽に思えてきた。
 そう遠くに意識をやっていたケンジは、顔の前に宇春の顔が近づいている事に気付いた。反射的に身体をのけ反らせる。

 「え、その。何でしょうか……?」

 思わず顔をまじまじと見てしまう。枝毛一つない黒い長髪、全てを慈しむかのような優しい目、ピンク色の柔らかそうな唇、チャイナドレスから覗く豊満な胸――あらゆる点が大人の色気を放出し、ケンジの思考を少しずつ尻切れトンボ状態にしていく。

 「う……ぁ……」

 「そこのエロ女、遊んでないで仕事しとけ」

 と、今まで沈黙を貫いていた赤島が仕方なくといった風に言葉を投げかけた。「エロ女じゃないわよぉ」と軽く否定しながら宇春はケンジから顔を離す。それと同時にケンジは大量の汗を顔に流しながら、深い息を吐いた。

 「ありゃ、やりすぎちゃったかしら」

 「いえ、気にしないで、くださいぃい」

 「暁も暁だぜ」

 咎めるような声で指摘する赤島。何故自分が、と驚きを隠せないケンジは彼の方を向いて理由を問う。

 「僕、今の状態で何か出来ましたかね?」

 「胸を揉む」

 「……はい、じゃあご飯頼みましょうか」

 完璧に赤島の言葉を無視した宮条によって場が一瞬で元通りに冷めていく。宮条、法城、暁
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