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横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋の日常はありふれていて、人間臭いものである(前)
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絢爛(けんらん)たる門が建っている。これが中華街への入口であり、俗に延平門と呼ばれる歴史深い特徴の一つだ。

中華街には四つの門が存在し、それらにはちゃんとした意味があるらしい。この延平門という名前は、平安・平和の永続を願い名付けられたのだと赤島は説明してくれた。

 日を重ねるごとに太陽の沈む時間が早くなり、この時間帯は街灯の力を借りなくては不便になりがちである。それでも人足は減る様子を見せず、むしろ会社帰りのサラリーマンや学校から直行して遊んでいる学生の姿で溢れていた。

 そんな人口密度の高い区画の中で、ケンジは赤島と法城、宮条と一緒に店を見て回っていた。門を背にした大通りには左右に多くの中華料理店が軒を連ね、ときどき芳しい香りがケンジの鼻孔をくすぐり、腹がか細い音を立てた。他の通りとぶつかる十字路にはそれぞれの流れに沿う人の群が混在し、少しでも気を緩くしたら波に飲み込まれてしまいそうになる。

 「ここ、本当に凄いですね……」

 「ケンGあんま来ないの?」

 「はい。小さい頃に母さんと来たぐらいです」

 「そりゃ横浜市民として勿体ないねえ。おすすめしたい料理いっぱいあるよ?」

 法城がいつもの黄緑パーカー越しに笑いながら語る。その隣にいた宮条は前を向きながら「あそこよ」と人差し指を向けて教えてくれた。

 そこは他の通りが複数合わさった広大な場所で、それに見合った人数を動員している。宮条が指すのはまさに真正面で、再び分断された通りの真横に建つ店だった。周りの店があまり目立つ色を使っていないのに反し、その店は赤と黄色をふんだんに使った装飾が特徴的だった。

入口の上部に『朱華飯店』という大きな看板が吊り下げられており、その存在を否応無しに引き付けている。

 赤島が先頭に立って店内に入る。その後に宮条、法城、ケンジと続いて座敷の部屋に誘導された。店内も外観と同じく(きら)びやかな色合いをしていて、壁に竜の絵や紋章などが描かれているのが中華らしくて楽しかった。

 ――竜の頭がメニュー版で隠れてる……。

 注意して見なければ分からないような箇所を発見し、心中でクスッと笑うケンジ。そんな彼の様子には気付かず、座布団に腰を下ろした赤島達はすぐに何を食べるかという話をし始めた。隣に座る法城に促されてケンジも選ぶ事にしたのだが、彼は僅かに顔を引きつらせた。

 「た、高い……」

 「いやいや、中華街舐めすぎでしょケンG。学校帰りにパクッ!ぐらいならまだしもここはれっきとした中華料理専門店。でもここはまだ安い方っすよね、宮条さん?」

 「ええ。他の店のほとんどは3000円以上だから、ここはまだ良い方ね」

 「さ、3000?確かにこっちの方がお得ですね……」

 ――てっき
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