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横浜事変-the mixing black&white-
殺し屋の日常はありふれていて、人間臭いものである(前)
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 「ぐっ、はぁ……」

 久しぶりに全力疾走したので息が苦しい。脇腹がキリキリと痛みを訴え、額からは冷たい汗が流れてくるのが分かる。後ろからの追っ手はいつの間にか途切れ、ケンジはようやく解放されたのだと実感した。

 学校を出た直後、見知らぬ女子生徒はもの凄いスピードで追いかけて来た。何度か捕まりそうになりながらも、信号や右折してきた大型トラックなどの障害物が功を奏した。おかげでこうして逃げ切れている。

 ――でも知らない人から追い掛けられるって、けっこう怖いかも……。

 例え同じ学校の生徒であったとしても、知らない人は知らない人なのだ。しかも美人が鬼のような顔で追い掛けてくるので余計に焦った。時折足がもつれそうになったのが、今では恥ずかしく思える。

 ケンジはそこで自分が横浜駅まで走り続けてきた事に気付き、内心で苦笑いする。ふと思い出して、携帯を確認。しかし仕事関係のメールは届いていない。やはり今日は休みなのだろうか。だが安易に決め付けるわけにはいかない。彼は一人の仕事仲間へ電話を掛ける事にした。二回目のプッシュ音が鳴った後に、気怠そうな男の声が受話口から流れ込んでくる。

 『よぉ、俺』

 「あ、もしもし。暁です。赤島さんですか?」

 『んあーわりぃ。いつもの癖で名前出すの忘れちまった。で、どうした?』

 「えっと、今日の仕事はオフってことで良いんですか?」

 『その話か。まぁ俺も迷ったんだけどさ。でも本部から連絡来ねえし、今日はゆっくり休もうぜ』

 「そ、そんなにあっさり……」

 『あれだ、もし仕事したいなら言えよ。俺の方で二、三件仕事溜まってんだ』

 「い、いえ大丈夫です」

 『つかお前今ヒマ?』

 「え?あ、はい」

 美人との白熱した追いかけっこで息が切れていたが、すでに回復している。横浜駅西口前の雑踏に目をやりながらケンジは会話を続ける。

 『そんなら俺らと飯食わね?中華街とかで』

 「今からですか?」

 『そうだが……。あれ、お前って横浜の方なんだっけ。じゃあちょっと遠いか』

 「いえ、すぐに行けます。ご飯食べましょう」

 『あー、無理しなくていいぜ?』

 「無理なんてとんでもないです。むしろ、中華街はほとんど行ったことないし、たまには良いかなって」

 『そういうことなら案内してやるよ。じゃ、西門でな』

 「は、はい」

 そう答えるとすぐに通話が切られ、携帯に通話終了の画面が浮かび上がっている。それを見ながらケンジは心中で疑問の種を膨らませていた。

 ――西門ってどこだろう?

*****

午後17時頃 横浜中華街西門

 JR石川町駅を降りて本牧通り沿いを少し歩くと、白を基調にした
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