3部分:第三章
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のよ」
「そうなんだ」
「そうよ。だから時々自分で作ったりするのよ」
「ふうん」
何か意外な言葉であった。だが少し考えれば美智子だって自分で何か作ったりはするだろう。信吾にしろ自分で何か作ったりもする。だから当然と言えば当然のことであった。
「このフェットチーネだってね」
「へえ」
「何か驚いた?」
「いや、それは」
「これでもパスタには結構自信があるのよ」
これまた意外な言葉だった。
「和食だって作ったりするけれどね」
「和食もなの」
「料理以外と好きなのよ」
美智子は言う。
「自分で作って食べるのがね」
「そうだったんだ」
「こうしてお外で食べるのもいいけれど」
「その時はやっぱりこれ?」
そのフェットチーネを指差して尋ねる。
「パスタ?」
「それもいいわね。他のもあるけれど」
「やっぱりね」
そんな話をしているうちにパスタやピザを食べ終えた。そしてデザートのプリンを食べている時に信吾はふと美智子が髪を掻き上げたのを見た。それで今だと思った。
「あのさ」
そして話を切り出す。
「今日誕生日だったよね」
「ええ」
「それでさ」
彼は言う。
「これ」
紫の箱を取り出した。
「受け取ってくれないかな」
「何かしら、これ」
「よかったら見てみて」
「ええ」
その手でそっと箱を受け取る。手元でその中をゆっくりと開けた。そこにあったのは銀のイヤリングであった。
「まあ」
それを見て思わず声をあげた。
「奇麗ね」
「そうだろ。ちょっと選ぶのに苦労したんだ」
苦笑いを浮かべて答える。
「けれど。どうかな」
「有り難う」
幸運にも受け取ってくれたようである。その証拠に笑顔になっていた。
「私銀って好きなの」
「そうなんだ」
「しかも丸いのって。何か真珠みたい」
「確かにそうだね」
美智子のその言葉に信吾も笑みになった。
「気に入ってもらえた?」
「勿論よ」
その笑みは朗らかなままであった。
「本当にいいのよね、これもらって」
「うん」
信吾もにこやかに笑って答えた。
「どうか貰ってよ」
「本当に有り難う。けれど」
「けれど?」
「何かこんなのもらって。悪いみたいね」
「いや、別に悪くはないよ」
そんな美智子をフォローした。
「だってさ。僕が自分で買ったんだし」
彼は言う。
「美智子ちゃんは全然悪くないよ」
「そうかしら」
「そうだよ。だから気にしないで」
「けれど」
彼女はそれでも言う。
「何かお返ししたいわ」
「お返し」
「ええ。何か欲しいのある?」
信吾の顔を見て尋ねてきた。
「よかったら言って」
「そうだね」
といっても特に欲のない信吾である。実はこれといってない。
だがここ
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