第百八十七話 舞い乱れる鳥その四
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「だからじゃ」
「あえてですか」
「敵の夜襲をあえて受けて、ですか」
「そのうえで勝つ」
「そうされますか」
「確実にな」
その為にもと言う信長だった。
「ここは山の近くに布陣するぞ」
「では」
中川清秀が言って来た。
「毛利の軍勢を見付け」
「それが第一じゃ」
「そうしてですな」
「そしてあえて敵の夜襲を誘うぞ」
「そうしてですな」
「勝てば三国が手に入るからのう」
「そのまま流れに乗れますな」
中川清秀は奮い立って言った、信長に。
「毛利との戦は」
「我等には刻があまりない」
このこともだ、信長はよくわかっている。だからこそこの時も言うのだ。
「東国のことを忘れるな」
「ですな、では」
「毛利との戦はすぐに終わらせ」
「そして東に引き返し」
「そのうえで」
東国での戦だった、このことは家臣達もわかっていた。それ故にだった。信長はこのことは強い声で真顔で述べた。
「あちらから来るのなら好都合じゃ」
「返り討ちにするまで」
「左様ですな」
「そういうことじゃ」
こう言うのだった。
「それで毛利との戦は一気に有利となる」
「時もですな」
斎藤利三が言って来た。
「それも」
「うむ、毛利との戦の相手は毛利だけではない」
「時もですな」
「だからじゃ」
それで、というのだ。
「ここで勝てばな」
備前や因幡の国人達が一気に織田家について、というのだ。
「そのまま備中まで進める」
「それでは」
「そのうえで」
「うむ、進む」
まさに一気にというのだ。
「そして備中で勝てば」
「その頃には戦の大勢はついております」
竹中が言って来た。
「ですから」
「そこで毛利とな」
「和睦ですな」
「それで毛利との戦を終わらせる」
これが信長の考えだった。
「よいな」
「和睦ですか」
「毛利は滅ぼさず」
「和しますか」
「そうされますか」
「降してな」
つまり織田家に組み入れるというのだ。
「毛利家の人材も欲しいしのう」
「あの毛利元就殿もですか」
林が言って来た、やや剣呑な目で。
「あの御仁は」
「謀神だからじゃな」
「はい、ですから」
それで、というのだ。
「あまり殿のお傍には」
「いや、あの御仁はあくまで敵に対して謀を使い天下取りの野心もない」
「だからですか」
「そうじゃ、配下にすればな」
その時の元就はというのだ。
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