第百八十七話 舞い乱れる鳥その二
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「何故降るのじゃ」
「はい、兵糧がなく」
「それでか」
「兵糧がなくては戦になりませぬ」
到底、というのだ。
「ですから」
「降るか」
「左様です」
「兵糧を用意しておらぬとは愚かな」
山中は敵将の言葉を聞きまずはこう思った。
「それを用意しておくのも武士の務めであろうに」
「いえ、ありましたが」
「あったと申すか」
「それを全て買われてしまい」
そしてだというのだ。
「城に篭ることも出来ず」
「降るか」
「左様です」
そうした状況だというのだ。
「ですから」
「ううむ、兵糧が買われるとは」
あらためて言う山中だった、彼はその後で羽柴が兵糧を買い占めさせていることを聞いて驚いた。そうしてだった。
その話を聞いてだ、彼は驚きつつこう言った。
「何と、敵の城の兵糧を買い占めさせておられるとは」
「しかも敵兵はです」
「降らせずにじゃな」
「鳥取城に行かせよと」
「そうしてか」
「はい、鳥取城に進めとのことです」
「どういうお考えなのじゃ、猿殿と小竹殿は」
「そこまではわかりませぬが」
報告をする旗本はこう山中に言う。
「しかし」
「このことはじゃな」
「やはり何かのお考えあってかと」
羽柴達にというのだ。
「そうかと」
「それはわしにもわかるが」
「何か大きいことですな」
「その様じゃな、しかし戦もなしに城が手に入るのならな」
それはと言う山中だった。
「よいことじゃ、城を次々と攻めて行くぞ」
「さすれば」
こうして山中は因幡の城という城を進んでいった、そうしてだった。
備前では信長率いる織田軍の主力が順調に進んでいた、その大軍の前に結構な数の国人達が織田家に降っていたが。
それでもだった、信長は構えた陣でこう言うのだった。
「降らぬ国人達も多いのう」
「はい、どうにも」
丹羽が信長に応える。
「まだ毛利についている者が多いです」
「そうじゃな、日和見の者もな」
「特にです」
「宇喜多がじゃな」
「あの者です」
彼がだ、特にだと言う丹羽だった。
「我等が勝つかどうか見極めています」
「そうじゃな。それでじゃが」
信長は丹羽にこう言った。
「毛利の軍勢がじゃな」
「既に備前に入っています」
今度は滝川が答えて来た。
「そして我が軍に迫ってきます」
「その数は三万じゃな」
「左様です」
数についても返事が来た。
「それだけの数です」
「十八万の我等に三万か」
「まともに戦っても勝てませぬな」
「到底な」
信長ははっきりと言い切った。
「昼から正面きって堂々と戦ってもな」
「押し潰してやりますわ、その時は」
佐々が威勢よく言って来た。
「ここで一気に」
「そう思うな、誰も」
信長は
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