2部分:第二章
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のネックレスが姿を現わした。
「アメジストの」
「うん、君の誕生石だったよね」
信吾は言う。
「だからさ。これにしたんだ」
実際は迷ってしまったのだがそれは隠していた。
「どうかな、これで」
「いいの?これ」
美智子は信吾の顔を見て問うてきた。
「こんなのもらって」
「君の為に買ったんだよ」
その言葉と優しい笑みが彼の何よりの言葉であった。
「だからいいんだよ。いや、貰ってくれないと困るよ」
「そうなの。じゃあ」
「うん、受け取って」
「有り難う」
美智子はそれに応えた。そしてその箱を受け取った。
ネックレスを手に取ってみる。それを前にかざしてみる。それは電灯の光の中で薄紫の淡い光を放ってきらきらと輝いていた。
「奇麗・・・・・・」
「気に入ってもらえた?」
「私紫って好きなのよ」
その言葉が何よりの好意の証であった。
「だから」
「そうなの。よかった」
「ねえ」
美智子はそのアメジストを眺めながら信吾に声をかけてきた。
「何?」
「お返し、何がいいかしら」
「お返しって」
「何かね、思いついたのよ」
美智子は言う。
「絵とかじゃ駄目かしら」
「絵!?」
「ええ。このアメジストのネックレスを見ていると思うのよ」
今美智子の心にこの上なく美しい絵が描かれようとしていた。
「絵を描きたいって。それでね」
「僕に」
「どうかしら、それって」
「僕の為の絵だよね」
信吾はそれに尋ねた。
「その、僕の為に描いてくれる」
「そうよ。いい?」
「嘘みたいだよ」
美智子の顔を見て応えた。
「そんなことって。今まで誰にもそんなもの贈られたことってないから」
「だって私もそれしかないから」
美智子も言う。
「絵しか描けないから。それで」
「うん、お願い」
信吾は言った。
「じゃあそれでね」
「わかったわ。じゃあ」
美智子はにこりと笑ってそれに頷いた。
「この美術館とアメジストの絵をね」
「うん、楽しみにしているよ」
そんな美智子の言葉が何よりも嬉しかった。アメジストは信吾の気持ちまで幸せにしてくれたのであった。このうえない宝になったのであった。
三つのプレゼントの恋 完
2006・11・18
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