第三十話 南海においてその十二
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「絶対にな」
「絶対に、なのね」
「そうさ、俺が負ける筈がないんだよ」
絶対に、というのだ。
「何故なら強いからな」
「そうね、確かに貴方は強いわね」
これは本心からの言葉だ、鈴蘭は怪人の力を既に見極めていた。そのうえで彼を強いと言い切ったのである。
「それもかなり」
「そうさ、ウツボを甘く見るなよ」
「ウツボは猛魚よ」
このことは事実だ、ウツボの歯は鋭く顎の力もかなりのものだ。動きは素早く隠れることも上手くだ。しかもかなり獰猛である。
「そのことを考えてもね」
「その通りだよ、よくわかってるじゃないか」
「そう、よくわかっているのよ」
鈴蘭は不敵に笑って怪人のその言葉をあえて指摘した。
「貴方のことをね」
「それで何でそう言えるんだ?」
「貴方をよくわかっていてね」
不敵な笑みでだ、怪人に言ってみせるのだった。
「そして自分自身もわかっているのよ」
「それで言った言葉だってのか」
「敵を知り己を知る」
孫子の言葉だった、まさに。
「それが戦いの基本よ」
「手前自身も知ってるからか」
「ええ、こう言うのよ」
「俺を楽に倒すってのか」
「そういうことよ、ではいいわね」
日本刀を上段に構え左足をすっと前に出してだ、鈴蘭は構えた。そのうえで怪人に対してその闘気を向けていた。
黒蘭はクラブを両手に持って新体操の構えになりだ、自身の相手であるシオマネキの怪人を見つつこう言った。
「最初に言っておくわ」
「何をだ?」
「貴方は負けるわ」
こう言うのだった、怪人に。
「貴方にとって残念なことにね」
「御前等姉妹はホラを吹くのが趣味なのかよ」
「ホラ?」
「そうだよ、そっちの姉貴の方も今言ったからな」
鈴蘭を目だけで見つつの言葉だ。
「そう言ったんだよ」
「ホラね。それは違うわ」
「事実だって言うんだな」
「事実になることよ」
近い未来にだ、そうなるというのだ。
「貴方は死ぬわ」
「御前に負けてか」
「そうよ、貴方は私に負けてね」
そして、というのだ。
「消えることになるわ」
「ほう、俺は相当に強いんだがな」
そのシオマネキと人を合わせた顔でだ、怪人は黒蘭に言った。
「この鋏と甲羅に勝てるのかよ」
「既に勝ち方はわかったわ」
これが黒蘭の返事だった。
「後はその通りに動くだけよ」
「へっ、やっぱりホラじゃねえか」
「貴方の強さもかなりのもの」
このことは認める黒蘭だった、鈴蘭と同じく。
「確かにその鋏と甲羅は相当なものね」
「わかってるじゃねえかよ」
「そう、わかっているのよ」
その二つのことをだ、まさにというのだ。
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