第三十話 南海においてその十
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「いるぜ、近くね」
「ええ、そうね」
「来てるわね」
菖蒲と菊が応えてきた。
「それも近くに」
「いるわ」
「あっちね」
向日葵は自分達から見て左手に顔を向けた、そこは岩場である。人はいない。
だが遠くにだ、四つの人影を見た。その人気のない岩場に。
薊はその四人を見てだ、すぐに仲間達に言った。
「一緒に旅行してないけれどな」
「そうね、もうこれはね」
向日葵もそちらを見て言った。
「縁よね」
「だよな、おい」
薊はすぐに人影に声をかけた。
「あんた達もそっちに来てたんだな」
「そうよ」
鈴蘭の声だった、そして。
自分達の近くまで駆けて来た薊達にだ、こう言った。
「貴女達も白浜に来てたのね」
「そうだよ、関西一周の旅をしてるんだけれどな」
「そこで会ったのね」
「そうだな、しかしな」
「ええ、見ての通りよ」
鈴蘭は妹と並んで自分達の向かい側にいる相手も見た、その彼等はというと。
虎に似た色彩のウツボと人の合いの子の怪人とだ、シオマネキと同じ様に青い甲羅で右手が鋏になっている怪人だった。その彼等と対峙しつつだ。
見事な、桜よりもまだ見事な肢体を白ビキニで覆っている鈴蘭がだ、黒のワンピースの競泳水着を思わせる水着ですらりとしたスタイルを覆っている黒蘭と共に薊達に言った。
「気配を察してここに来たらね」
「こうして会ったところよ」
「それでなのよ」
「今から戦うところよ」
「助太刀しようかい?」
薊は右手に自身の七節棍を出しつつ二人に言った。
「何なら」
「まさか。黒蘭ちゃんと一緒よ」
「姉さんもいてくれているから」
二人はすぐにだ、薊の言葉に返した。
「怖くとも何ともないわ」
「問題は見当たらないわ」
「だからね、薊ちゃん達はね」
「そこで見ていて」
「そうか、それじゃあな」
それならと応えてだ、そして。
薊は動かないことにした、そうしてだった。
今度は怪人達を見てだ、こう言ったのだった。
「ふうん、海だからな」
「そうね、出て来る怪人もね」
「海棲生物ね」
二人が薊に答えた。
「そして私達のいるところに」
「出て来るのね」
「だよな、そこも気になるな」
薊もこう言うのだった。
「この連中あたし達のストーカーかい?」
「ストーカーか。面白い表現だなおい」
ウツボの怪人が薊達の会話を聞いて笑って言って来た。
「俺達が御前等を好きで追い掛けてるっていうのか」
「そうでもないよな」
「ははは、俺達にそんな感情はないんだよ」
「好き嫌いってのはか」
「ついでに言うと憎くもないさ」
そうした感情もないというのだ。
「ただ戦ってな」
「倒したいだけなんだな」
「そうさ、後気付いたら御前等の近くにいるんだよ」
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