第三十話 南海においてその七
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「しかしお父様とお母様に言われました」
「桜ちゃんがって」
「そうです、娘だからと言われて」
「養子やそうしたことは無関係で?」
「そう言われました」
「そうなのね。本当にいい親御さんね」
「子供を分け隔てしないからですか」
桜は何故菊がそう言ったのか察して応えた。
「だからですね」
「そう、うちの両親もそうだけれどね」
「お兄様方もですね」
「私も養子だけれど」
それでもなのだ、菊の両親もまた。
「実の子供として育てて。可愛がってもらってるから」
「いい親御さん達ですね」
「本当にそう思うわ」
菊はにこりと笑って桜に答えた、そして。
菖蒲達もだ、こう言うのだった。
「私のところも」
「うん、私のお家もね」
「私のお家もそうね」
菖蒲、向日葵、菫だった。言ったのは。
「養子とかそうしたことはね」
「全然気にしないで大事にしてくれるわ」
「血はつながっていないのに」
「皆いい親御さんに巡り会えたのね」
彼女達の言葉を受けてだ、裕香はこう言った。
「本当に」
「そう思います、心から」
「それだけで幸せよ」
桜と菊がその裕香に答える。
「よい家族に入ることが出来たことは」
「本当によかったわ」
「よくある継子いじめということがないだけで」
「生きていて幸せよ」
「そうよね、いい家庭にいるってことはね」
裕香も笑顔で応える。
「幸せよね」
「それは裕香ちゃんもよね」
「うん、私も実家はね」
裕香は向日葵の問いに少し微妙な顔になってからそのうえで答えた。
「お父さんもお母さんもね。お祖父ちゃんお祖母ちゃんも」
「その割にあまり表情明るくないわね」
こう指摘したのは菫だった。
「やっぱり実家の場所が」
「そう、とにかく辺鄙だから」
裕香はこのことを忘れていなかった、もっと言えば忘れられなくてそれで皆にも話すのだ。
「隠れ里って言われる位にね」
「実際に隠れ里だったのではないかしら」
菖蒲はその裕香に自分の考えを述べた。
「奈良にもあったらしいから」
「そうなの、言われてみればね」
「納得出来るのね、裕香さんも」
「ええ、そうした話も聞いたことがあるから」
「平家の隠れ里は各地にあったわ」
「近畿にもなのね」
「隠れられる場所ならね」
落ち延びていってそうしてなのだ、平家の者達は隠れ里に入ってそのうえで人知れず暮らしていたのだ。それも何百年の間。
「流石に山窩の人はいないと思うけれど」
「山窩ね」
「裕香さんは山窩の人とは」
「会ったことはないわ」
それはというのだ、裕香にしても。
「というかまだいるの?山窩の人って」
「そうらしいわ」
こう話すのだった、友人達に。
「どうやらね」
「そうなのね、もういなく
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