悪夢-ナイトメア-part1/狙われた姫
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ンリエッタは何も聞き着たくないと耳を押さえながら泣き叫んだ。
無自覚のうちに、アンリエッタは大粒の恐怖と絶望の涙を流し続けていた。すでにウェールズの姿も声もなく。真っ暗な世界の真ん中で、彼女はただ一人ぽつんと、子供のように泣き続けた。
すると、アンリエッタは誰かに後ろから髪を引っ張られた。
「痛…!」
「この弱虫!!」
痛いから放せと叫ぶ前に、聞き覚えのある声が…今の自分にとってなじみ深くも感じる声が放たれ、アンリエッタは突如ビンタを食らい、真っ暗な空間の地面に倒れた。一体誰が自分の頬をぶってきたのだ。体を起こすと、信じられないことに母マリアンヌ太后とマザリーニ枢機卿が、そして二人の後ろから、見覚えのある二人組が歩いてきた。ルイズと、サイトだ。しかし、この真っ暗な世界のせいか、彼らの様子はおかしかった。
「許されない恋とわかっておきながら、いつまでもめそめそと…わが娘ながら情けない」
マリアンヌ太后の口から出た言葉は、とても彼女の口から出たものとは思えないほど冷酷すぎた。ゲルマニアとの同盟が、自分がウェールズに宛てた手紙が原因で白紙となったとき、ウェールズを失って嘆き悲しんだ自分を、一人の母として抱きしめてくれた人とは到底思えない姿だった。
「王族とは常に民たちのことを第一に考え、毅然となさらなくてはならぬ者。なのに姫殿下は皇太子と…ああ、嘆かわしい」
マザリーニから発せられた言葉も、非常に冷たかった。お小言が多いのはいつものことだが、アンリエッタには感じ取れた。彼の声が、今の自分をあらゆる愚か者を超えた、世界で最も愚かな存在として見下している声となっていたことを。
すると、マリアンヌとマザリーニの後ろからサイトとルイズが歩み寄る。しかしその二人もマリアンヌたちと同じ…アンリエッタを蛆虫を見るような目で見降ろしていた。
サイトが彼女の前で身をかがめ、その首を鷲掴む。ものすごい力で
「この女は、お前の持つ国への忠誠心ゆえに裏切れないことをいいことに、お前に死地に行けって糞な命令下したよな。しかもゲルマニア皇帝と結婚することが決定したってのに、昔の男との思い出にいつまでも甘えちゃってよ…。こんな女どう思うよ、ルイズ?」
鼻で笑いながら、サイトは後ろに控えているルイズに尋ねる。
「人間の風上にも置けないわね。私ったらかわいそう、惚れた男に本気の愛を誓っておきながら裏切り者を使者に選んで殺させようとしたり、お友達って言葉を使ってうまく私を籠絡して死地に追いやったり…こんな屑女のために働いてたなんて、ああ酷い!姫様ったら血も涙もないわ!!」
わざと嘘泣きをかましてきたルイズ。アンリエッタには信じられなかった。ここにいる彼らは、少なくとも自分の知る限りこんなに冷酷で残忍な顔をするはずがない。
「まあでも、この女の絶望に染まった顔を見ている
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