悪夢-ナイトメア-part1/狙われた姫
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それだけのために死地に追いやって死なせようとしたんだろ?」
アンリエッタは、淡々と信じがたいことを言ってきた彼の言葉に、さっきまでの落ち込み用が嘘のように立ち上がって彼に反発した。
「ち…違います!そのようなことは決して!」
アンリエッタがウェールズに宛てた手紙がレコンキスタに奪われ、ゲルマニアにわたってしまえば、アンリエッタはウェールズとゲルマニア皇帝の二人と重婚したという重罪人とみなされ、トリステインは同盟を結ぶことができず、単独でレコンキスタ…そして迫りくる怪獣たちと、確実に敗北する戦いに臨まなければならなくなってしまう。そこまではすでに分かっている。
だが、手紙だけじゃない、ウェールズ本人も生きていた場合でも、二人の間に交し合った誓いが明るみにされる可能性を否定できない。魔法や魔法薬によっては惚れ薬のように人間の心を惑わすものがある。当然自白剤も存在する。ゆえに法律で禁止されているが、モット伯爵やチュレンヌのようにトリステイン貴族でさえ裏で違法行為をしでかすのだ。あのレコンキスタがそんな倫理観念にとらわれるはずもないだろう。ウェールズを生け捕りにされることで、彼自身にトリステインとの同盟を白紙にする秘密を吐かされるかもしれない。だから、アンリエッタは秘密裏にワルドにウェールズの暗殺を依頼した…。さらに、まるで彼女の心を見透かしたように、ルイズへの羨望を見抜いてきた。だが、ルイズが自分にはない自由・友人関係・充実した日々…アンリエッタが持っていないものを持っているからって、意図的に彼女が結果的に死ぬように、アルビオンへの任務に行かせた…なんて言いがかりだ。現にアンリエッタは、ルイズがアルビオンへ行かせてほしいと申し出た時は反対していた。
彼はアンリエッタを深く愛している…それは誰の目から見ても分かりきっていたことなのに、目の前の彼は平然とありもしない卑劣な言いがかりを恋人に突き付けたのだ。
「トリステインの都合で僕を殺そうとし、自分勝手な妬みのために共を死地に追いやったくせに都合がよければ、死地に追いやった友にすがる。さっきみたいに望まない女王への即位と責務、そして無能者たちへの辟易を一時でも忘れようと、都合よく僕との思い出にすがってその醜い心を癒そうとする」
呪詛の言葉をつづっていくウェールズ。その旅にアンリエッタの眼が、表情が、さらに絶望の…ドス黒い闇の色に染まって行く。
嫌だ…やめて…それ以上冷たいことを仰らないで…。
「父上が死んだのも、信頼に足る家臣たちが倒れたのも、グレンが傷つきどこかへ消えたのも、炎の空族たちが散り散りになったも…全部…」
「やめて…」
アンリエッタは後ずさる。しかし、彼女は下がったと同時に背中に何かがぶつかる感触を覚える。振り向くと、そこにウェールズが立っていた。おかしい、ウェールズはついさっき正面
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