第八章
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じゃあ安心して見せてもらっていいのね」
「一応は」
だがその返答は弱いものだった。
「そうだけれど」
「一応はって何よ」
「また弱気になってるの?」
「私が普通に出来ていればいいけれど」
俯いて述べた言葉である。
「けれど。それが出来なかったら」
「駄目って言いたいのね」
「出来るとは思うけれど」
言うその言葉もまた言い訳めいていてどうにも今朝電車に乗る前とはまるで別人になってしまっている。
「それでも。やっぱり」
「出来ると思っていたら出来るんじゃないの?」
「ねえ」
皆にとってはその今朝までとはうって変わって弱気になっている彼女が歯がゆくてそれでこう言ってハッパをかけたのであった。
「逆にできないと思えばできない」
「そうじゃない、何でも」
「何でもそうなのね」
「そうよ。大体ね」
皆はその有美を咎めるような顔で見つつ言うのであった。
「今まで出来ていたじゃない」
「しかも胸のことだって」
あえてこのことも話に出すのであった。
「最初はいいように考えていたじゃない。それが急に」
「考えてみたらやっぱり」
有美は俯いてそれに答える。
「そういうのって。そこまで考えていなかったし」
「恥ずかしいの?」
「西園寺君、意識してるのわかるし」
「わかっていたらいいじゃない」
「ねえ」
図書室の中で顔を見合わせて言葉を交えさせるのだった。彼女達は何処もかしもも本が入れられた本棚を後ろにしつつ言葉を交えさせているのである。木造の見事な本棚ばかりである。
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