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Act_2 《オレンジ》
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最前線のこの場所でならば、経験値だろうとレア素材だろうと十分に手に入る
暇を潰す片手間に、資金を稼ぐのも悪くはない

「よう」

74層転送門前
彼と出会うまで、その想定で、男は《カームデット》へと来ていたのだ

全身黒の、やや背の低い少年──《キリト》
彼からの軽い挨拶に、男は被っていたフードへと手をかけた

「攻略にしては随分早いが」

「困ったお姫様からのご要望だよ」

男の問いに、キリトは軽口交じりで返した
お姫様──アスナの事だ
昨晩、《ラグー・ラビットの肉》を料理して貰ったキリトは、そのままアスナと今日パーティを組む約束を取り付けられていたのだ

「元気そうだな」

男は、少し微笑み──キリトの後ろにある転送門が、僅かに光る瞬間を見逃さなかった

じょじょに近付く叫び声と、それに連れて大きくなる白い輝き
聞き覚えのある声に、すぐさま反応し、男はまとっていたボロ布をシーツのように、大きく広げた

ボフッ

黒いマントへ飛び込む、白き輝きを放っていた"何か"
それを確認することはせず、男はマントをすぐに自分の身体へと纏う
黒いシーツが消えたそこからは──キョトンと、状況を掴めないアスナが立っていた

思わず、キリトの口から「おぉ」と言う感嘆が漏れる
まるでマジックのようだったからだ
いや、でも、どちらかと言えば闘牛士の"それ"に近い部分があったかもしれない

「冷静さは欠くな、と教えただろう」

呆れが多く含まれた溜息を男が吐き、アスナがハッと気がついたように振り返った
言葉を失い、口をわなわなと震えさせた後、赤面

──確かに、今のは、ちょっと恥ずかしかった

キリトは内心でアスナに同情する
もしかすれば、あそこでマントを差し出さなければ自分の上に落ちていたかもしれないが
そうすれば、もしかすればもしかしたかもしれないが
血盟騎士団における初代《副団長》に、こんな赤っ恥を見せたのだから、
流石に、これは同情するしかないだろう

「ど、どうして此処に……!」

キッと、アスナがキリトを睨む
その姿を見て、キリトは慌てて首を振った
決して密告(チク)ったワケではないし、そもそも彼との出会いは本当に偶然だった
やってませんの猛アピールに、アスナは、拗ねたように頬を膨らませる

──秘密で、強くなろうと思ったのに

──助けられてばかりではない事を、示そうと思ったのに

本来なら、男を《アルゲード》で出会った時点で、PTに誘おうと考えていた
だが、それではいつもと同じ様に守られるような立ち回りをされてしまうだけだ
だからこそ、秘密で──キリトに付いてきて貰っているが──迷宮を攻略したかった
"強くなっている証"を手に入れ、見せた
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