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機動6課副部隊長の憂鬱な日々(リメイク版)
第5話
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過激派メンバーの男は地面を這って逃げ始めたのだが、
ゲオルグはレーベンを振り上げた姿勢で固まったまま、じっとそれを
見送ろうとしていた。

レーベンが"マスター! 止めをさしてください!"と声を上げるが、
ゲオルグは身体を小刻みに震わせながら、動こうとしない。

ちょうど別の敵に止めを刺したところだったヴィンセンスがそれに気づき、
逃げる男を殺したあとでゲオルグのところに駆け寄ると

「お前、何やってんだ!」

とゲオルグの襟首を掴んで怒鳴りつけた。
それに対してゲオルグは振り上げていた両手をだらりと降ろして

「す、すみません・・・でも・・・どうしても・・・できなくて・・・・・」

と震えながら答えた。
その様子を見ていたヴィンセンスは近くに居た別の班員を呼ぶと
ゲオルグをその場から連れ出させた。

そして、作戦終了後。
本局まで戻ってくるとすぐに、ヴィンセンスはゲオルグを連れて小さな
会議室に入った。
目の前でうなだれているゲオルグに向かって

「処理って言葉の意味が判ってなかったのか?」
「体調でも悪かったのか?」
「殺せる自信がなかったのか?」

と次々に尋ねるヴィンセンスであったが、ゲオルグはそのいずれにも
首を横に振った。
困り果てたヴィンセンスが

「じゃあ、なんで止めを刺さなかった?」

と尋ねると、その問いかけにもゲオルグは首を横に振った。
途方に暮れたヴィンセンスがため息をつきかけたとき、ゲオルグは蚊のなくような
小さな声で話しはじめた。

「なぜできなかったのか、僕にもわからないんです・・・。
 あのとき、自分が何をするべきかははっきりと判っていました。
 レーベンをあの人の背中に突き刺す。それだけでよかったはずなんです。
 でも、どうしても、身体が動かなくて・・・・・すみません」

そこまで話したゲオルグはうなだれて再び黙りこんだ。
その様子を見ていたヴィンセンスはゲオルグの隣まで歩いていくと
ゲオルグの肩に手を置いて話しかけた。

「あんまり気に病むんじゃない。 とりあえず今日は帰ってゆっくり休め」

その言葉に小さく頷き、とぼとぼと歩いていくゲオルグの背中を見送ってから、
ヴィンセンスは上司であるヨシオカ1佐の部屋を訪れた。
不敵な笑みを浮かべて彼を出迎えたヨシオカは、

「新人の坊やが何やらやらかしたそうじゃないか?」

と茶化すような口調で尋ね、ヴィンセンスはそれに対して頷き

「ウチに来た新人はだいたいああですから、慣れたもんですよ」

と苦笑した。そして、

「なので、いつものアレをシュミットにはやらせようと思いますけど
 構いませんね?」

とヨシオカに向かって尋ねると、ヨシオカは頷きつつ

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