第5話
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「俺の想像が正しければ・・・ね」
納得顔で何度も頷く陸曹の言葉に、シンクレアは肩をすくめながら応じた。
そして、陸曹の肩にポンと手を乗せる。
「まあ、何にしろだ。 さっきのことはゲオルグさんが君のことを嫌っているとか
邪険にしてるからじゃないと思うよ」
「はい、僕もそう思います。 単にめぐりあわせが悪かっただけですね」
笑顔を浮かべて頷く陸曹の表情を見て、シンクレアは小さく頷いた。
「そうそう。 じゃあ、戻ろうか!」
そう言ってシンクレアが陸曹の背中をポンと押すと、陸曹は軽い足取りで
諜報課のオフィスに向かって歩いていく。
シンクレアはゆっくりとその背中を追って歩きながら、小さくため息をついた。
(これ貸しですからね、ゲオルグさん・・・)
そのころ、ゲオルグはちょうど居住区にある自分の部屋に帰ったところだった。
部屋に入ると手に持っていた鞄を乱暴に放り投げ、戸棚を開けてウィスキーの瓶と
グラスを取り出し、制服のままソファーにドカっと腰を下ろした。
そしてネクタイを緩めると、明かりもつけずにまだ封の切られていない
瓶の封を乱暴に破りボトルの蓋を開けてグラスにどぼどぼと無造作に
その中身を注ぐ。
そしてグイッとグラスを傾け、注いだ半分ほどのウィスキーを一気に喉へと
流し込んだ。
焼け付くような喉の熱さに顔をしかめつつ、ゲオルグは流し込んだウィスキーを
飲み込み、大きく息を吐いた。
ソファの背にもたれかかり天井を見上げると、ゲオルグはうなり声とも
叫び声ともつかない声を上げて目を閉じた。
ゲオルグは今日のように急な任務などがあった日は決まって早めに帰り、
自室に戻るやいなやウィスキーを1本まるまる飲んでそのまま眠る。
いかにも身体に悪そうなことをあえて彼がする理由は
概ねシンクレアが陸曹に向かって語った通りであるが、その背景には
ゲオルグが情報部に異動してきて初めて参加した任務でのある出来事がある。
その任務はとある過激派集団の殲滅作戦であった。
ゲオルグはまだ工作班に入って日も浅いということで、当時の班長であった
ヴィンセンス3佐に同行することになっていた。
事前のミーティングでも過激派メンバー全員を殺害するという方針は伝えられており
作戦開始直前のブリーフィングでも確認されていたので、ゲオルグもそれ自体は
きちんと認識し、納得して作戦に臨んでいた。
だがいざ作戦が開始され、ゲオルグ自身がターゲットを殺害するという段になって
それは起こった。
手傷を負った過激派メンバーの一人に止めを刺そうとレーベンを
振り上げたゲオルグの手がピタリと止まってしまったのである。
それを見た
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