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機動6課副部隊長の憂鬱な日々(リメイク版)
第5話
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で固まってるんだ?」

陸曹の正面から彼の両肩をがしっと掴んでシンクレアが声を掛けると、
陸曹の目に光が戻ってくる。

「あ・・・はい。すいません・・・」

だがまだ本調子ではないのか、どこかその口調は覚束ない。

「大丈夫かい?」

「あ、いえ・・・はい。大丈夫、だと思います・・・たぶん」

シンクレアの問いかけに応じるその声もどこか自信なさげで、目線はせわしなく
泳いでいた。

(これは、少し落ち着かせたほうがいいな・・・)

陸曹の様子を見てそう結論付けたシンクレアは陸曹の肩を抱くようにして
通路へとつながるドアに向かって歩き出した。

「い、1尉? どうしたんですか?」

シンクレアの行動が理解できず狼狽する陸曹を引きずるように
シンクレアは部屋から通路へと出た。

「少し話そうか」

そう言ってニコッと笑うシンクレアに向かって陸曹は黙って頷いた。
2人は並んで通路を歩き、諜報課オフィスからほど近い休憩スペースに入った。

「何か飲もうか、何がいい?」

「え、あ、じゃあ、ホットコーヒーで」

「はいはい、ホットコーヒーね」

シンクレアはにこやかに頷くと、休憩スペースの片隅にある自販機のところまで
歩いていき、陸曹の分のコーヒーと自分の分のレモンティーを買うと
陸曹のところまで戻ってきた。

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。 ごちそうになります」

陸曹はシンクレアから紙コップに入ったコーヒーを受け取ると、
両手で抱え込むようにして中身を啜った。

「まあ、それにしてもタイミングが悪かったね、あれは」

レモンティーに少し口をつけたシンクレアが微笑を浮かべてそう言うと、
陸曹は目を丸くしてシンクレアの顔を見た。

「あれって、班長のさっきの・・・」

陸曹の言葉にシンクレアは"そうそう"と頷いて話を続ける。

「陸曹はウチに来てからまだ日が浅いから気付いてないかもしれないけどね、
 ゲオルグさんってときどき今日みたいに結構早く帰る日があるんだよ」

シンクレアがそう言うと陸曹はこくこくと頷いた。

「はい、気が付いてました。なんでなんだろうって不思議だったんですけど
 誰に聞いてもはっきりしたことは教えてくれなくて・・・」

「だろうねぇ・・・」

シンクレアは苦笑しながら呟くようにそう言うと、急に真面目な顔になって
陸曹の顔をじっと見た。

「君は戦場でのゲオルグさんを見てどう思う? 正直に言っていいよ」

「戦場での班長・・・ですか? そうですね・・・」

そう言ったきり陸曹は腕組みをして黙りこんでしまう。
シンクレアがレモンティーを半分ほど飲み終わった頃、陸曹は顔を上げた。


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