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機動6課副部隊長の憂鬱な日々(リメイク版)
第5話
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分の声を足すことによって、
別室で拘束されている男の仲間を殺害しているさまをリアルタイムで聞かされている
という錯覚を男に起こさせたのである。


「まあ、鮮やかな手並みなのは間違いないな」

2尉の言葉に頷きつつ尋問班長はゲオルグの尋問手法をそう評した。
だがその言葉とは裏腹に表情は冴えない。
彼がこの状況をあまり快く思っていないのは明らかである。

「この事態を予想してあの音を記録されてたんでしょうか、シュミット3佐は?」

2尉の問いかけに対して尋問班長は力なく首を横に振った。

「さあな、私にも判らん。だが、もしこうなることを予測して録音していたんだと
 すると、彼の予測力は人智を超えたものかもしれんな」

そう言って尋問班長を再び力なく首を振る。

「あ、そういえば」

そのとき、その場にいるもう一人の男である尋問班の曹長が声を上げ、
班長と2尉は曹長の方に一斉に目を向ける。

「そういえば、何だ?」

曹長は直属の上司である2尉に険呑な目を向けられ、一瞬たじろいだ様子を見せたが
すぐに立て直して口を開く。

「あのですね、ちょっと前に分析班のヤツから聞いたんですが
 シュミット3佐は任務で殺しをやったときの映像を全部記録していて、
 ときどきそれを見ては悦に入ってるって・・・」

曹長がおずおずと語った内容に対し、班長と2尉は思わず息をのんだ。
それが事実であるならゲオルグは殺人を楽しんでいる、ということになる。
しばし3人の間に重たい沈黙の時が流れる。
1分ほど経ったとき、思考の海に落ちていた班長はハッと我に返った。

「その話に裏付けはあるのか?」

厳しい口調で班長に問われ、曹長は慌てて首を横に振った。

「知りませんよ、そんなこと。 自分も聞かされただけですから」

「ならこの話をするのはこの場だけにしておけ。
 下らん噂話で功績ある工作班長を中傷するようなことはくれぐれもないように」

そう言って他の2人が頷くのを確認した班長であるが、彼自身の心中にも
曹長の言ったことに対する疑いがしこりのように残ったのだった。





一方、部屋をあとにしたゲオルグは無表情な顔で足早に通路を歩いていた。
諜報課のオフィスに入ると、自分のデスクに向かってすたすたと進んでいく。
そして自分のデスクに座ると端末を開いて画面をぼんやりと眺めつつ
椅子の背に体重を預けて大きく息を吐き出した。

腕組みをしてうつろな目を端末の画面に向けていたゲオルグであったが、
しばらくすると両手で自分の顔を挟みこむようにパチンとたたいてから
端末に向きあって事務仕事を処理し始めた。


班長としてのゲオルグの仕事は意外と多岐にわたる。
約20名
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