第1章 群像のフーガ 2022/11
4話 咎の重み
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のも………って、そもそも洗濯必要なかったっけ――――………ヒヨリ?」
不意に、無反応だったヒヨリが手を握ってきたために思わず名前を呼んでしまった。
「………ごめんね。少しだけでいいから………」
このまま握ってて、とヒヨリは続けた。
………全く、俺は本当に気の利かない幼馴染だと、痛感してしまう。
「迷われると困るからな。このまま帰るか」
「………うん」
ヒヨリには身に覚えのない恐怖で辛い思いをさせてしまった事を悔やむ一方で、この糾弾は本来、俺に向けられるべきだったのだとも思う。
………俺はヒヨリの言う通り、あのキバオウの言う《ビギナーを見捨てたベータテスター》とは違う。ヒヨリを守りながら、共に強化しながらここまで辿り着いたのだ。だからこそ、他の《自分だけを守っているベータテスター》よりも罪深い。なぜなら、ヒヨリだけを守るために他のすべてのプレイヤーを、はじまりの街に置いてきてしまっているのだから。
動機はどうであれ、進む意思のあった新規プレイヤー達が文字通り右も左も判らぬまま奮闘し、そして死んでゆく最中であっても、俺はヒヨリを守り続けた。彼等と同じ新規プレイヤーを個人的な理由で区別した。
大数の中において、ヒヨリという存在も単なる1に帰結する。俺はつまり、他の二千が消えてゆくのを無視しながら、一を守り続けたのだ。それが俺の背負うべき罪。《一人の為にその他を切り捨てた罪》だ。
この罪は、俺にのみ刻まれるべきだ………
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