第1章 群像のフーガ 2022/11
4話 咎の重み
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
避出来る死を誰かの責任に転嫁するのは、そもそもお門違いなのである。
それにもし仮に、あの日、お前が俺をベータテスターだと突き止めて《セティスの祠》の所在を俺に吐かせていたら、何が変わったというのだ?
俺にダンジョンを案内させ、ベータテスターだからとボスドロップ品の《フロウメイデン》や発掘品の《レイジハウル》を、《コート・オブ・アヴェンジャー》を、強化素材を奪い、金を奪い、それらを手に入れたあとはどうするのだ?
結局、お前の嫌った《ぽんぽん強うなったベータ上がり》とステータス上の差異がなくなって、どうなるのだ?
――――そうなった時、誰がヒヨリをこの世界から救ってくれるのだ?
………だが、言い返せなかった。今、ヒヨリを守っているのは俺だから。いや、彼らが俺の装備を剥ぎ取っても、この役目は俺の全てだから。
………今、声を挙げれば、ベータテスターと知られれば、それによる危害は俺のみではなくヒヨリにも向けられるから………
「………違うもん………見捨ててなんか、ないもん………」
――――ふと、隣から濡れかけた幽かな声が聞こえた。
見ると、ヒヨリは俯きながら震えていた。目に溜めた涙が零れそうで、とても見ていられないような悲痛な表情だった。
「………そろそろ、腹が減ったな。戻るか」
俯くヒヨリの頭をワシャワシャと撫でてやる。自分でやっておいて言うのも憚られるが、結構乱雑に撫でてしまった。とりあえず謝るのは後にするとして、もうこの会議に残ろうにもメリットはないだろう。肩を震わせるヒヨリは、しゃくりあげながらも何とか頷いて答えてくれるのを確認すると、広場の外までヒヨリの腕を引く。
最後にもう一回だけ広場を確認すると、大柄でスキンヘッドの黒人男性らしき姿がキバオウと対峙していた。この位置からではもう様子を窺い知ることはできないが、どうせボスの情報など奴等には皆無なのだ。そもそもボス攻略会議と銘打ちながら、結局最後はベータテスター狙いの《たかり》紛いの糾弾なのだから始末に負えない。
………いや、それではあの騎士様が悪いようではないか。と、思考を巡らすのもそこそこに切り上げる。
「明日は一日休もう………そういやこの街にさ、結構旨い店があるんだけど、明日行ってみないか?水っぽい焼きそばみたいな変なのだけど、なかなかイケると思うからさ………」
さっきから無言のヒヨリが気になり、なんとかしようとあらゆる話題を振ってみるが、全く反応はない。ただ鼻を啜ったり目を拭いたりしながら隣を歩くだけである。こんな時、あの騎士様の《話術》スキル――――当然、システム的に存在しない――――が羨ましくてならない。
「そうだ。そのケープ一着だけだと洗濯できないもんな。防具屋とか見に行く
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ