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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
4話 咎の重み
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 だが、そんな不躾な乱入にさえ、ディアベルは想定の範囲内とばかりに余裕の笑顔を崩さない。


「こいつっていうのは何かな? まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するならいちおう名乗ってもらいたいな」
「……………フン」


 毬栗頭は不機嫌そうに鼻を鳴らすと、噴水の前まで進み出て振り向く。


「わいは《キバオウ》ってもんや」


 名乗り、男――――キバオウは広場全体を睥睨した。
 何かを探すような視線は俺達を通り過ぎて………一瞬どこかで止まったかと思うと、それも気のせいだったかのように視線を戻し、ドスの利いた声を広場に響かせる。


「こん中に、五人か十人、ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」
「詫び? 誰にだい?」


 キバオウに場所を譲るように噴水の縁に移動していたディアベルは、俳優のそれと見紛うかのような仕草で両手を持ち上げる。そちらには一切の視線もくれることなく、キバオウは憎悪を込めて吐き捨てた。


「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでいった二千人に、や。奴らが何もかんも独り占めにしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや! せやろが!!」


 怒号が、ざわめきを殺した。
 この毬栗が何を言わんとしていたのか、何を憎んであの場に立ったのか、この場に居合わせたプレイヤーが――――それこそ、ヒヨリも含めて全員が理解したのである。


「――――キバオウさん、君の言う《奴ら》とはつまり………元ベータテスターの人たちのこと、かな?」


 ディアベルの表情からも今までの爽やかな笑顔は消えて、代わりに厳しい表情を浮かべつつ、その核心を確認する。


「決まっとるやろ」


 つまらない事を聞くな。と言いたげにディアベルに一瞥くれると、キバオウは続ける。


「ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にはじまりの街から消えよった。右も左も判らんビギナーを見捨てて、な。奴らはウマい狩場やボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。………こん中にもちょっとはおるはずやで。ベータ上がりっちゅうこと隠して、ボス会議の仲間に入れてもらお考えてる小狡い奴らが。そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティメンバーとしては命は預けられんし預かれんと、わいはそう言っとるんや!」


 糾弾が途切れても、誰も言葉を返さなかった。
 内心では、こんな物言いは根本的に間違っていると叫びたかった。なぜなら、死にたくないのならはじまりの街から外にでないというだけで安全は確保されるのである。そこから一歩踏み出したのならば、そこからは自己責任であらねばならない。確実に回
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