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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
4話 咎の重み
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で抜け出して、隠しダンジョン《セティスの祠》に向かい、その試練を見事に攻略したのである。ただ、あの時は俺自身が内部の構造を知っていた事もあり、マッピングを省いて階段へまっしぐらに進んでいた――宝箱は点在するものの、それほど有用なものは入っていないため割愛してしまった――ために攻略自体は一週間で終了した。ヒヨリに戦闘を教えていたり、レベリングを行っていた時間の方が長かったくらいである。そのこともあり、ヒヨリは手探りの探索の厳しさを知らないでここまで来た。


「地図もない場所で目的地を探し出すのって大変だろ? あの騎士さん、それをたった一日で見つけたんだってさ」
「す、すごい!?」


 そして騎士様の――――というより、努力したであろう人間の名誉のためにも、この上なく分かりやすい例えで教えてやる。同じ立場だったら、多分ヒヨリは来た道すら戻れなくなるだろう。騎士様がやってのけた事は、ヒヨリからすれば魔法にも等しい芸当なのだ。


「一ヶ月。ここまで、一ヶ月もかかったけど……それでも、オレたちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものがいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ! そうだろ、みんな!」


 直後、広場に喝采が轟く。今まではごく少数だった拍手が急に数を増し、騎士様の爽やかながら強い意志の籠った雄弁を讃える。それだけ、彼の言葉はこの場に集まったプレイヤーの心に響いたということだろう。かくいう俺も、これほどに非の打ち所のない高潔さは見たことがない。それにボスを倒すことで、クリアできることを証明できれば、現時点ではフルレイドに満たない人数だったとしても、今後はさらに参加を希望するプレイヤーが増えるだろう。最下層で燻り続ける閉塞感を打破することこそが何より皆に希望を齎せることを知っているからこそ、この騎士様はまとめ役を引き受けたのかもしれない。
 そして俺達も、この戦いに助力できるなら――――


「ちょお待ってんか、ナイトはん」


 低い声が、沸く喝采と俺の思考を止めた。
 前の人垣が割れ、その中央に取り残されたかのように立っていたのは、小柄でありながら筋肉質な体格の男だった。とくに身を乗り出してまで見るつもりもなかったが、毬栗(いがぐり)を思わせる個性的な髪型が目に映る。


「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」


 いきなり出てきて横柄な物言いに、広場は先程の喝采とは対極の形で騒ぎ出す。俺自身も「別に仲間ごっこがしたいわけじゃない。ごっこ遊びなら余所でやれ」と心の中で吐き捨ててしまったくらいに、この男への第一印象は悪い
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