後日談の幕開け
二 悪意
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ねえ。何か、聞こえない?」
そう、思う。私へと向け、彼女。マトは、言い。言葉を受けて、足を止め。銃を。彼女は、爪を。構えて、アリスは手を離す。
耳を澄ます。音の正体。また、何か。敵が近付いているのかと。
「……聞こえる……何か、這うような。でも……近付いている訳では……ッ」
駆け出す。私は、彼女達を置いて。視界の端、アリスは、驚いたように。けれど、今は。彼女達を待っているわけにはいかない。
壊れた扉、私の壊した扉。その扉の向こう、暗がりへ――
銃口を。向けた時には、既に。
あの、怪物。肉隗。形は、大きく欠け。随分と小さくなったそれが……肉の束、と言ったほうが良いのかもしれない。頭も、手術台も壊れ、失ったそれが。天井近く、大きく開いた通気口へと這い登り、滑り込む。その姿を見て。
「ッ」
舌打ち交じりにライフルを撃ち込む。銃弾は、通気口へと吸い込まれ。肉を穿つも、奴は止まらず。そのまま、奥へ。噴出した粘菌と、金属の凹む音。傷付いた怪物は、私の手の届かぬ場所へと逃げ果せて。
残るのは。怪物の這った跡、赤く肉を引き摺った跡。まさか、まだ、動けるなんて。それとも目を離している間に再生し、息を吹き返したのか。何れにせよ、また襲い掛かってくるかも知れない。また、私たちを。彼女たちを。傷つけるかもしれない相手を取り逃してしまった……酷く、苦々しい思い。背後、追いついた彼女達も、また。部屋の様子、私の様子。見て、察してくれるだろう。
「……まだ、動けるとは思わなかったわ」
頭の中の知識だけでは。予想できないほどの生命力。目の当たりにして、苦汁を舐めさせられて。初めて、その厄介さを理解する。これから出会う敵達も……出会うかどうかも、まだ知らないけれども。あれほど丈夫な体を有しているのかと考えると頭が痛くなる。あの怪物が特別、再生力に特化したアンデッドであったことを祈りながら。銃を背に担いだ。
「……ごめん。取り逃がした」
私の言葉に、マトは。横に、首を振って。
「いや。気付けたのはリティだけだった。私こそ、最後までこの部屋に残っていたのに。ごめん」
この怪物が放った手の群。私がアリスを運んでいる間、彼女が片付けてくれていたのだったか。
「一応、聞いておきたいのだけれど……あなたがこの部屋に残っていたときは、特に変化は無かった?」
「……無かった、はず。動くことは無かった。あの手に群がられても居たから、潰すときに一緒に傷付けたりはしたけれど……」
「寧ろ、あの後も傷は増えていたのね。……相当厄介ね」
溜息を吐く。吐いたところで、何も変わらず。あの怪物が戻ってくるわけでもない。どうしようもないこと、過ぎたことと諦め。部屋の奥。戦っていたときには注意深く探れ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ