後日談の幕開け
二 悪意
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い。知れないけれど。
「……アリス」
浮かない顔の彼女。あの惨劇。あの異形。私達でさえ身が竦む。撒き散らされた血と肉に塗れた、あの場所に。
「アリスは、部屋に入らずに……待っていてもいいと思う」
探索は、私達で行い。アリスは部屋の外で、終わるのを待っていても良いだろうと。これ以上、あの場所に……悍ましい光景の広がる場所に。アリスを連れて行きたくない。
「……マトと、リティはまた、あの部屋に入るんでしょ?」
「調べてはおきたいわ。少しでも、情報が欲しいから」
リティは大丈夫だろう。彼女は、自分の感情と、行動を断ち切り。冷静であり続けてくれる。
「私も調べる。けれど、あなたには無理をして欲しくない。何か見つけたら部屋の外まで持ってくるから……」
彼女へと伝える。思い描くのは、震えるアリスの姿。崩れ落ちる彼女の姿。目に焼き付いて離れない。怪物を前に怖がり、動くことも出来ず、心が壊れてしまうのではないかと、不安になり。出来るならば――
「――一緒に行く」
出来るならば。あの部屋に彼女を。通したくない、と。
「……大丈夫? 無理をする必要は……」
彼女は。首を、横に振って。立ち。
「大丈夫。二人が頑張ってるのに、私だけ……置いていかれたく、ないの」
埃を払い。彼女は、彼女は。言い。私は。
連れて行くべきか。連れて行っても良いものか。答えを、返せず。
「……マト」
「……何、リティ」
立ち上がる彼女、新たな名前。アリスに貰った名前を呼ばれ。その言葉には、本の少し。小さな小さな棘が有り。諌める口調に驚き、彼女を見れば。
彼女は。僅かに眉を顰めて。しかし、それも。私と目が合い。合えば、すぐに。小さく吐いた息と共に、笑みに変わって。
「過保護」
言葉は。私に対する忠告で、けれど、何処か嬉しそうに。その表情に、怒りは無く。侮蔑も無く。私の胸の内、考えは。分かっているといった様子で。
「……そう、かな」
「そうよ。自分で決めたことなら、私たちはどうこう言うべきじゃないわ」
そう、言って。アリスへと向けてその手を差し出し。
「……でも。何かあったらすぐに言って。マトも私も、大事な仲間を失いたくないの。……体の怪我とかだけじゃなくて。あなたの心も壊れて欲しくない。いい?」
「……うん。分かってる」
差し出された手。彼女の手を握り。アリスもまた。思っていたよりもずっと、しっかりと。力強く返事をして。
その姿を見て、確かに。私は弱気になりすぎていたのかも知れないと。一つ、吐き出す息と共に、不安の影を吹き払って。
「……そう、だね。ごめん」
「あ、謝らないで。マトが心配してくれてるんだって、分かってるから」
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