1話 レーテ・バーウェルス
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フィオーレ王国東部に位置する商業都市――マグノリア。
今日も、おそらく、昨日も明日も陽気な住民によって賑わっていることでしょう、そんな街にある家の一室で私は目を覚ましました。
寝ぼけ眼を擦りつつ、ベッドから起き上がり、大きく欠伸。窓から朝日が差し込み、部屋を明るく照らします。
時刻は午前7時。私実家に住んでいた時であったならば1時間も前には叩き起されていたでしょうが、今の私は一人暮らし。起こしにくる両親など居る筈がありません。誰にも睡眠を邪魔されず、快適な朝を迎えました。
窓から暖かい朝日の差し込む今日は疑いの余地も無く晴れ。絶好の仕事日和と言えるでしょう。
しかし、仕事をするにも準備などがいろいろとある訳で、ベッドから出た私は、二本白い線が入った緑の襟、鎖骨の間と胸元とみぞおちあたりに一つずつ付いたひし形のような水色のボタン、袖には黒いフリルのある黄色いブラウスと、薄く花の柄が描かれている深緑色をしたスカートという普段通りの服装に着替えました。
お気に入りの、薄い黄色のリボンをつけている鴉羽色の帽子と、面白い推理小説が数冊入ったポーチを手に取り、マグノリアの街へ繰り出して、私――レーテ・バーウェルスの一日は始まります。
◆
この世界には魔導士という人々が存在します。世界人口の一割に満たない彼等は魔法と呼ばれる摩訶不思議な力を、ある時は犯罪者を取り締まり、ある時は商売、ある時は趣味として利用します。
そして、その魔導士達に仕事の仲介などをする組合組織、その名も"魔導士ギルド"。世界各地に数多く存在する魔導士ギルド、そして、そこに所属する魔導士は人々と生活になくてはならないものとなりました。
魔法を駆使して依頼を熟す魔導士と、魔導士に報酬を与えて陰ながら支える一般人。この2つが両立して、今の世の中があるのです。
フィオーレ王国有数の商業都市であるマグノリアにも、当然、魔導士ギルドはある訳で――
屋根の上にまた建物を建てたような重層の建築物、所謂、楼閣の3階建てで、3階の屋根はチューリップの球根のようなドーム状になっており、その天辺には白い旗が掲げられ、風に靡く。建物の真正面にも大きな旗があり、妖精をモチーフにした紋章が描かれている建物。
外からでも騒がしい、けれども賑やかな声。近隣の住民からしたら迷惑極まりないかもしれませんが、不思議と、マグノリアという街に合っているような気がします。
中に居る人達も良く言えば個性溢れる、悪く言えば変わっていて、昼間から宴会騒ぎになり、いつの間にか殴り合いの喧嘩が勃発しているなんて常日頃。酷い時には建物の一角が無くなることもありました。それでいて、何故か仲間意識はとても強く、メンバーの多くは家族のような絆で結ばれているとい
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