第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十六日・夜:『スクール』
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劣な光の下から滑り出た、静謐な夜の闇。安堵と共に、嚆矢は夜天を見上げ────
「結局、脱出経路の確保が一番重要な訳よ。後は、監視カメラの映像記録の入手と消去とか」
「ハハ、違いない……惚れ直しちまったよ、フレンダちゃん?」
頭上に佇む黒タイツ、白いミニスカートが翻る。したり顔のフレンダ=セイヴェルンが指先でUSBメモリーを弄びながら、不敵な碧眼でこちらを見下ろしている。
因みに、ナイスアングルであるが……暗くて見えない。この時ばかりは、非常灯の光が欲しかった。
「────ッふん!」
「ゴホォ!?」
と、短い茶髪を揺らしながらの最愛の肘打ちが鳩尾を抉る。地面に背中を預けていては、威力の逃がしようがない。
「さて、長居は超無用です。直ぐに撤収しましょう、足の手配は?」
「勿論、万端な訳よ。あのスットコクラッカー、呼び出してボコボコにしてやる〜!」
『ゲホ、ちょっとくらい心配してほしいニャアゴ……』
翻筋斗打つ嚆矢を尻目に、フードを被り直した最愛とフレンダは敷地を脱出すべく振り返る。
《ふむ、嚆矢よ》
(火は掛けねぇ)
何にせよ、後は物品の提出のみ。入手した『黒い棘』と、監視カメラの画像、これで沈利のご機嫌が取れれば良いのだが。
《そうか。だが……降り掛かる火の粉は、払わねばなるまい?》
(……何?)
帰るばかり、そんな気の抜けた空気が満ちて。
《敵、右前方より来襲。数、三》
「ッ……待て、二人とも!」
“悪心影”は、そんな空気の破綻をさも面白そうに嘲笑う。
「────そりゃア、手間が省けた。コイツだろ、それ?」
誰何するよりも早く長谷部を掴み、フレンダと最愛を庇い立つ。届いたその声は、闇の彼方から。闇よりも尚、濃い暗さで。ジャリ、とアスファルトを鳴らしながら────びしゃりと、投げられた『モノ』により路面に『紅い花』が咲いた。
「ッ……」
首、男の。嚆矢には見覚えはない。しかし、後ろの二人は──息を飲んで。
「……超残念でしたね、フレンダ。どうやら、もうボコボコにするところは残ってないみたいですよ」
「みたいね。結局、潜入がバレたのはこのせいだったって訳か」
肯定だ。即ち、この『首』の男こそがクラッカーの『電気使い』だったのだろう。
しかし、今はどうでも良い。問題は、それを為したこの『敵達』をどうするか、だ。
「よう、『アイテム』……この前は、うちのが世話になったみたいで。まぁ、脱走したゴミだが……だからって身内には違いねぇ」
歩み出た、痩躯の少年。スーツのような服を着た、まるでホスト
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