第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十六日・夜:『スクール』
[3/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
庇いながら。
「斯くなる上は……御免!」
「な────あきゃ?!」
と、痛みに一瞬だけ気を散らした最愛を────嚆矢は背中から、クラウチングスタートの構えで走り出しながらお姫様抱っこした。
「ちょ、あの、ええ!?」
「遅い! 走り抜ける!」
いきなり背後から抱き抱えられ、息を呑みながらただ為すがままとなる彼女。いつも目深に被っているフードが捲れ、ショートボブの茶髪が靡く。
まぁ、当たり前だ。突然、背後から抱きすくめられた上で平然と指揮した人間などは居るまい。最愛が虚に突かれた隙を、良いように。思う様に退路を、過たずに自在に走り抜ける。
「くっ、このぉ!」
「ンゴフ!? そ……それでもォォォグフッ?! そ…………そろそろ挫けそうです! 頑張ったよね、俺! もう、挫けて良いよね!?」
二度目、三度目と。曲がり角毎に、直に『窒素装甲』を無抵抗に受けながら。まぁ、威力自体はショゴスで無効だが、衝撃は首の間接に蓄積する。
首が取れそうな程にひん曲がりながら、既に降り始めているシャッターを次々に掻い潜り、潜り抜けながら。走り抜ける、来る時のように『黄金の娘』も『白銀の娘』も『第六天魔王』も、誰の助けもないままに────!
「チッ……ラス1、だけど────他より速ェ! もう閉じかけか!」
「寧ろ、超遅いレベルですよ!」
「煩せェェ、島の風かテメェは!」
此方にとっては一番最後、向こうにしてみれば一番最初。外界に繋がるシャッターは既に、八分以上閉じていて。
「クソッタレ……!」
そう、叫ぶくらいには無理な距離で。閉じ込められれば、後は助けを待つか。或いは、窒息消火……二酸化炭素の充填消火器が作動するだけで終わる。
外の闇、安寧の暗がりが一条に。槍に染みていた毒の為に、演算や魔力も飢えている。もう、走るだけでも苦行だ。取り返しのつかない失敗だ、こんな─────
『結局────しゃがむ訳よ!』
「「────!?」」
その、長らくジャミングされていたインカムに届いた、外界からの呼び掛けのままに。魔術や能力の選択肢を捨てて、迷わずスライディングする。勿論、最愛を抱いたまま。
刹那、閉まり掛けたシャッター。その隙間を────盲んばかりの光と爆発が、撫でる。
「ッシャァァァッ!」
叫びと共に、開いた僅かな隙間に滑り込む嚆矢と最愛────だが、間に合わない。
再び下がりだしたシャッター、対戦車ライフルの直撃にすら耐える強度の。それが今、断頭台と化して襲い来て─────
「っ……っらぁぁぁぁ!」
最愛の『窒素装甲』で押し返された。非常灯の下
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ