暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
[3/18]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
膨らませながら――それでも、歓喜の声を上げる。ああ、そうか。答えは簡単だった。
「はじめまして、と言っておくべきかな。プレシア・テスタロッサ女史」
 黒衣を翻し、御神光が戦場に姿を現した。この声には確かな理性がある。今の彼は『魔物』に飲み込まれてはいない。
「貴方、一体何を……?」
 プレシアが呻くのが聞こえた。
「何、方向性は逆だが、やっている事は貴女と同じだ。そう驚く事じゃあない」
 御神光がうっすらと笑う。そう、彼は同じ事をしているだけだ。プレシアと同様に、八つのジュエルシードを従え――それによって、世界を引き裂こうとする力を単純に打ち消している。ただそれだけにすぎない。
 両者に違いがあるとすれば、それはただ一つ。御神光に従うジュエルシードの方が、より強い輝きを発しているということだ。
「これでもかつては大魔導士の称号を受け継いだ身だからな。この程度の事が出来なければ先代に申し訳が立たない」
『次元震活動停止。……発生しかかっていた次元断層も閉塞しつつあります』
 エイミィからの通信。それは、単純に御神光とプレシア・テスタロッサの力量の差を示すものだった。同じ条件で相反する力を解放して――その結果勝ったのは光だった。ただそれだけの事だ。だからこそ、世界は滅びなかった。プレシア・テスタロッサが御神光を上回れない限り、世界は滅びない。
「な、んでよ……」
 それを理解して、プレシア・テスタロッサが呻いた。
「なんで? なんで! なんでっ!?」
 発狂したように、彼女は繰り返す。
「何で皆、私からアリシアを奪おうとするの?! 私達が……アリシアが何をしたっていうの? あの子はまだ五歳だったのよ! まだまだやりたい事があって、叶えたい夢があって――私はただそれを取り戻してあげたいだけなのに! それだけなのに! 何で邪魔をするのよ!?」
 それは愛する我が子を失った母親の悲鳴だった。子を失った母親ならきっと誰もに共通する願いだった。そして、彼女の手には『願いを叶える』ための力があったはずだった。
「か、あさん……?!」
 無理な封印によってボロボロになったフェイトが、それでも悲鳴を上げる。それは、突如としてプレシアが血を吐いたからだ。咳き込み、胸を掻き毟りながら何度も血を吐く。
素人の私にも分かるほど深刻に、彼女は肺を患っている。それをジュエルシードでどうにか抑え込んでいたようだが――御神光の力によって、それも相殺されたのだろう。
「叶えて……」
 血の海に膝をつきながら、それでも彼女はジュエルシードに手を伸ばす。
「叶えなさい! 私の願いを!」
 その瞬間――ゾッとした感覚が背筋を駆け抜けていった。あの得体の知れない『ナニカ』は次元の狭間に再び消えていったが……その得体の知れない『力』に侵された代物はまだ残ってい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ