魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり3
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膨らませながら――それでも、歓喜の声を上げる。ああ、そうか。答えは簡単だった。
「はじめまして、と言っておくべきかな。プレシア・テスタロッサ女史」
黒衣を翻し、御神光が戦場に姿を現した。この声には確かな理性がある。今の彼は『魔物』に飲み込まれてはいない。
「貴方、一体何を……?」
プレシアが呻くのが聞こえた。
「何、方向性は逆だが、やっている事は貴女と同じだ。そう驚く事じゃあない」
御神光がうっすらと笑う。そう、彼は同じ事をしているだけだ。プレシアと同様に、八つのジュエルシードを従え――それによって、世界を引き裂こうとする力を単純に打ち消している。ただそれだけにすぎない。
両者に違いがあるとすれば、それはただ一つ。御神光に従うジュエルシードの方が、より強い輝きを発しているということだ。
「これでもかつては大魔導士の称号を受け継いだ身だからな。この程度の事が出来なければ先代に申し訳が立たない」
『次元震活動停止。……発生しかかっていた次元断層も閉塞しつつあります』
エイミィからの通信。それは、単純に御神光とプレシア・テスタロッサの力量の差を示すものだった。同じ条件で相反する力を解放して――その結果勝ったのは光だった。ただそれだけの事だ。だからこそ、世界は滅びなかった。プレシア・テスタロッサが御神光を上回れない限り、世界は滅びない。
「な、んでよ……」
それを理解して、プレシア・テスタロッサが呻いた。
「なんで? なんで! なんでっ!?」
発狂したように、彼女は繰り返す。
「何で皆、私からアリシアを奪おうとするの?! 私達が……アリシアが何をしたっていうの? あの子はまだ五歳だったのよ! まだまだやりたい事があって、叶えたい夢があって――私はただそれを取り戻してあげたいだけなのに! それだけなのに! 何で邪魔をするのよ!?」
それは愛する我が子を失った母親の悲鳴だった。子を失った母親ならきっと誰もに共通する願いだった。そして、彼女の手には『願いを叶える』ための力があったはずだった。
「か、あさん……?!」
無理な封印によってボロボロになったフェイトが、それでも悲鳴を上げる。それは、突如としてプレシアが血を吐いたからだ。咳き込み、胸を掻き毟りながら何度も血を吐く。
素人の私にも分かるほど深刻に、彼女は肺を患っている。それをジュエルシードでどうにか抑え込んでいたようだが――御神光の力によって、それも相殺されたのだろう。
「叶えて……」
血の海に膝をつきながら、それでも彼女はジュエルシードに手を伸ばす。
「叶えなさい! 私の願いを!」
その瞬間――ゾッとした感覚が背筋を駆け抜けていった。あの得体の知れない『ナニカ』は次元の狭間に再び消えていったが……その得体の知れない『力』に侵された代物はまだ残ってい
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