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青い春を生きる君たちへ
第1話 転校生
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何が青い春なんだ。何が青春だ。キラキラ輝く人生最良の時間、世間でそんな風に言われてるから期待してみりゃ、その結果がこれか。まったくもってゴキゲンだ。これが人生最良の時間なんだってんなら、俺は人生に未練なんかねえよ。もう全く、下らねえ。

逆光で表情の見えないあの“狸”の顔を見上げ、じん、と痛む鼻筋から無様に血を垂らし、床にポタポタとシミを作りながら。
小倉謙之介は内心呟いていた。

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日本のとある地方都市に、私立青葉松陽高校はある。そこそこ、私学も存在する街の中で、学力的には中堅どころの高校だ。不況下で、私学もスポーツか進学か、どちらかに大きな特徴を打ち出さないとやっていけないはずで、青葉松陽のような普通科オンリーでコース分けも細かくない高校は正に没個性、何の取り柄もなくとっととくたばってしまいそうなものだが、そういう中途半端さをむしろ売りにまでしてるかのような経営で何とか青葉松陽は存続している。こんなフツーの高校でもやっていかれるのは、やはり学校(行き場)を求める生徒の側にも中途半端な者が多く、スポーツで身を立てられる訳でも勉学が図抜けてる訳でもない没個性な生徒の受け皿となっているからだろう。事実、松陽は公立もしくはトップ私学の滑り止めとしては人気があり、併願で受ける生徒はこの街には多い。他校からのおこぼれに預かって食いつないでるのが青葉松陽という高校で、そこに居る生徒も何の取り柄もないが故に何の取り柄もない学校を目指したような奴と、他所の高校を志望していたが泣く泣く落ちてやってきた落ちこぼれが殆どであった。

「転校生?」
「うん、来るらしいよ。」
「もう高2の9月だぜ?今頃転校かよ」

少し教室前に立ち止まってみると、部屋の中からはやはり、自分の事を噂している声が聞こえた。そりゃそうだ。こんな狭い学校という空間に生きている高校生が、その空間の構成要素であるクラスメートに新しい人間を加えるんだから、気にしないはずがない。学校なんてどこも、設備は似たようなものなのだから、むしろその中に居る人間の事、またはその人間同士の関係しか気にかけられる要素が無いではないか。

そこまで考えて、小倉はため息をついた。どうしてこうなってしまったのかという気持ちが半分、いずれはこうなるはずだったんだろうなという気持ちが半分。何とも煮え切らないものである。別にこの教室のドアを開けるのに、緊張して立ち止まってる訳じゃない。このドアの向こうに居る連中など、高が知れている事など分かっている。少なくとも、前居た場所に比べれば余程マシだろう。平和で、普通の高校生活が待っている。それは望んでいた事のはずだ。前居た場所では、1日に100回くらいは出て行きたいと思っていた。普
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