Act_1 《花の剣士》
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──もしかすれば、もっと数が上がるかもしれない
男は躊躇う事なく、アイテムウィンドウ内のアイテムをエギルへと譲渡した
モノの譲渡を確認し、エギルは男へと対価のコルを支払う
取引完了のボタンを押せば、即座に取引完了だ
「しかし、随分と面白いものをお売りになるな」
エギルの茶化すような声に、男は小さく微笑んだ
その後は言葉を紡ぐことも無く、踵を返し、アルゲートの裏道へと消えていった
人だかりも、男が消えていく最中に、自然と解散していった
小さな罵声は、やがて街の大きな喧騒の中に飲まれていく
その場には《ラグー・ラビットの肉》を売りに来たキリトとエギルだけが残っていた
「うっす」と何の気なしにキリトはエギルへと声を掛けた
先ほどまでの大仕事で疲れていたのだろう、エギルは力なく「おう」とだけ返す
大きな身体が一回りほど小さく見えて、ちょっとだけ笑える
「あんな"お客様"と、なんの買取をしたんだ?」
「ん? あぁ、コイツさ」
エギルはアイテムウィンドウから、一輪の花をコンバートして見せた
鮮やかな青色だ
萎れている様子などまったく無い
"時間が止まっている"様に、その花は今も尚瑞々しく輝いている
だが──
「普通の花だな」
「そうだな、何の特徴も無い花だ」
この花に力は無い
特殊なステータス増強も
特別な武器の素材になる事も
ましてや、薬草のような効果などもありはしない
観賞用、それ以上でもそれ以下でもないものだ
「じゃあ、さっきの指3本は30万コルとかじゃなくて──」
「3コルだ。当然だろ」
──……深読みし過ぎたかな
エギルと男のやり取りは、確かに重苦しい雰囲気だった
が、それはきっとエギルが緊張していただけのこと
取引の内容は、ホント、なんてことは無い程に小さな、子供のお小遣い程度のものだ
「時々来るのさ。何の役にも立たない花から超激レアな花の素材まで。
どんなものだって基本1本1コルだ」
「"死神"に吹っかけたのか……?」
「いや、向こうがそれで良い、の一点張りよ。流石に気が引けるんだがな……」
申し訳なさそうに頭を掻くエギルの姿を見て、ふと思い出す
「そう言えば──花が好きだったんだよな、"アイツ"」
「何か言ったか」とエギルが不思議そうに此方を見つめるが、
キリトは首を横に振るだけだった
◆
第50層主街区《アルゲート》
ギルドの活動のない休日、友人たちの顔を見に足を運んだ矢先、
アスナは、その裏道から現れた男の姿を見て、風のように人の壁を越えて走り寄った
「──こっちに来てたんだ、ね」
見知った顔──と言っても、フードに隠れ
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