道化と知りつつ踊るモノ
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りだが、華琳の中ではそれもまた良しであった。
「ゆえゆえ残してきたけど……いいのか?」
いつまでも落ち込んでいては話が進まない。思い遣って落ち込む事は美徳かもしれないが、それを晒し続けるのが嫌だった。月に対してと違い、特にこの覇王の前でだけは見せたくなかった。
故に……秋斗は自分から話を切り替えた。
「いいのよ。あの子にはあの子の仕事が出来たのだから」
「帝の心情操作、だな?」
「その通り。あの子は覇の思想を是と出来るようになった。私のやり方に同調してもいるでしょう。私が言うよりもあの子がこれからの事を話した方が帝を引き込みやすい」
優しい二人には酷な事だ、とは思うが華琳も口には出さない。
「……なんで俺を帝に合わせなかった?」
「自分で答えが出ている事を二度も私に聞くの?」
即座に返される。試しているのか……否、その程度読み切れないお前ではないだろう、と図れているだけ。
ぐ……と言葉に詰まった秋斗はため息を一つ。相変わらず厳しい人だ、と零してから自嘲気味に笑った。
「黒麒麟への憧れ」
「ふふ、そうね」
「記憶を失った俺では人々の思い描いている偶像をぶち壊す懼れがある。
……お前さんが遣る事に一枚噛ませろってんだから余計に、な。だから帝に対しての直接嘆願をさせなかった……ってとこか。袁家の処断は覇王の指先一つだし、黒麒麟の意向も組み入れられるから曹操殿は余計な不和を与えたくないわけだ」
口が引き裂かれた。華琳の心は歓喜に染まる。何も言わずとも自分のしたい事を読み取っていた事が、ただ嬉しかった。
「じゃあ聞きましょう。この戦で私が欲しいモノは何?」
クイ、と首を彼に向ける。獰猛な光が宿るアイスブルーに、秋斗は震える……こと無く昏い黒を返して、薄く笑った。
「答えが出ている事を聞くべきじゃあないんだろ?」
「あなたの口から聞きたい、と言ったら?」
意趣返ししてみても、するりと躱して逃げ場を塞がれる。苦手な華琳に勝てるはずも無い。彼はやれやれと左右に首を振って俯いた。
「……劉備に楔を一つ。孫家に楔を一つ。西涼に楔を一つ。幽州に楔を一つ。そしてこの大陸全ての既成概念をぶち壊して作り変える……だろ?」
――正解。やはりお前は……黒麒麟でなくとも私と同じ未来を描ける男なのね。
口には出さずに、華琳は笑みを深めて前を向く。ぼかした言い方ではあったが、彼が何を言いたいのかは分かっていた。
ただ、彼が華琳の予想通りだけで収まるかと言われれば……否。
「この戦を蜘蛛の巣にしておいた」
「知ってる」
「白馬義従は予定通りに白馬を奪うだろう」
「予定通り」
「荀ケ殿は先にこっちに合流するみたいだ」
「当然の行動ね」
「張コウが……多
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