暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
道化と知りつつ踊るモノ
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うと、袁家を殺す裏切り者であろうと……どんな存在にでも堕ちてみせよう。

「あはっ♪」

 心の底から、楽しみを浮かべて笑った。昏く、暗く。

――大丈夫。これでいい。こうすればこの子は絶対に助かるから。



 †



 暗闇の天幕の内、上気する呼気を弾ませるは黒と赤。
 疲れを余り感じさせないように、怪我をした腕を気遣いながら、夕から求めた情事の後。
 バタリ、と寝台に倒れ込み、そのまま明はぎゅうと愛しい少女を抱き締めていた。汗に濡れた身体も気にせず、温もりを確かめ合えば……心に来るのは充足と安息。

「……不安?」

 胸の前から声がした。愛しい愛しい彼女の声音。救いたくて仕方ない少女から送られる優しい思いやり。

「んー、不安は無いねー。ほら、あたしって曹操軍にもてもてだから♪ 殺される事はないんじゃないかな?」
「でも……官渡の要塞は秋兄が作った。張コウ隊で一度強引に攻める事になるけど、どんな罠が待ち受けてるか分からない」

 見上げる瞳がうるうると滲んで、彼女の方が不安が大きいのは直ぐに分かった。
 ふっと口を綻ばせ、明は赤い舌をぺろりと突き出す。緩んだ目元で、歓喜に揺れる黄金の瞳で、安心しろと示すだけ。

「だーいじょうぶっ! だって罠仕掛けた秋兄があたしの事欲しいって言ってたもん♪ それならあたしだけは絶対殺さないでしょ♪」
「それは……そう、だけど……」

 釈然としない返答が悲哀を伝え、明は抱きしめる腕に少し力を込めた。
 ゆっくり、ゆっくり背中を叩く。白絹の如き肌は、汗が乾いたのかすべすべと心地いい。
 このまま宥めても、きっと不安は取れないのだろう……明には夕の心の内が読み取れる。
 それなら話を変えよう。決めれば早く、小さく鼻を鳴らして口を尖らせた。

「でもさ、よくよく思い出してみるとなーんか変なんだよね」
「変? 何が?」
「秋兄が、だよ。真名も呼んでくれなかったし、憎んでるみたいだし。何より自分を抑えてでも劉備を育ててたでしょ? それなのに離反して、でも壊れても歪んでもいないなんて……わけわかんない」

 思い出せば、明を見る目は昔とは全く違った。華雄を殺した後の濁った眼差しとも、洛陽を終えての不敵な輝きとも。

「……公孫賛達を切り捨てたのに、敵討ちの為に離反するのも変」
「矛盾だらけなのはいつも通りだけど……やっぱり引っかかるよねー」
「秋兄が官渡に籠ってたのとも関係があるかもしれない。あの人を使えば白馬と延津での戦闘ももっと上手く回せたはず」
「官渡に罠張ってただけじゃなくて?」
「それは発案だけすれば李典の工作部隊に任せれるモノ。帰ってから確認すればいいだけ。だから……きっと何か秘密がある」

 うんうんと唸って考えてみて
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