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山の人
第九章
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スに出ているのだ。その願い通り海に行っているのである。
「楽しくやってるかしら。スタイルも整ったし」
 彼女はスタイル、そして亮子は体力。それぞれ欲しいものは身に着けることに成功したのである。やはり身体を動かすことこそが大事であった。
「夫婦仲良く」
「じゃあさ」
 考えていると宗重が彼女に声をかけてきた。
「行こうよ」
「あっ、そうね」
 声をかけられ我に返る亮子だった。
「それじゃあ。二人でね」
「途中でへばったら駄目だよ」
「わかってるわよ」
 笑顔で夫に返す。
「その為に。しっかり身体整えてたのよ」
「走ってだよね」
「そうよ」
 このことは夫も知っているのだった。
「それでよ。だから」
「そこまでするなんて」
「驚いた?」
「そうだね」
 妻の言葉を認めて頷く。
「僕はそこまでしないからね、とても」
「すると思うわ」
 しかし亮子はここでこう言ったのだった。
「あなたも。するわ」
「するかな」
「するわ、絶対にね」
 絶対と言い切ってさえみせる。
「私もそうだから。あなたも」
「僕も。そうかな」
「するわ。ほら、いつも」
「いつも?」
「散歩の時だけれど」
 彼女が話すのはその時のことだった。二人が休日にいつも並んで歩くその散歩のことだ。二人にとってはかけがえのない時間にもなっているのだった。

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