第137話 愛紗仕官する
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えられただけでなく、清河王の王号を許された諸侯でもある。そして、その地位は未だ健在である。店主が正宗の身の上を知らないとしても、正宗の一言で店主を不敬罪で処刑できるのだ。
「女将さん、正宗様への無礼は取り消してください」
愛紗は必死な表情で女将に訴えた。しかし、店主は涼しい表情で正宗のことを見ていた。それどころか侮蔑に満ちた表情を正宗に向けていた。彼女は権威を傘にする人間が嫌いなのかもしれない。
「清河王? だから何なのさ」
正宗は店主の言葉にしばし沈黙した。彼は怒りを抑えた後、口を開いた。
「迷惑料が足らないのか? いくら欲しい」
正宗は憮然とした表情で店主を見ると、店主は正宗の態度に呆れたような表情で見た。
「兄さん、見損なわないでくれるかい。あんたは家族を金で売り買いするのかい?」
店主は正宗を馬鹿を見るような目つきで見た。正宗の表情は先ほどまでと違い、怒りの熱が抜けていた。そして、真面目な表情で店主のことを見つめていた。正宗は誰にも気づかれないように小さい深呼吸をすると立ち上がり、おもむろに店主に頭を下げた。
「店主、あなたを侮辱するような言葉を吐き申し訳なかった。許して欲しい」
「お互い様だし。別に気にしていないよ。で。どうするんだい?」
店主は正宗に尋ねた。
「あなたの店で店員として一ヶ月働こう」
「二言はないね」
店主は正宗の顔を覗きこむように顔を近づけてきた。
「父祖に誓って」
正宗は真剣な表情で店主の両目を見て答えた。
「いい返事だ!」
店主は先ほどと違い愛想の良い雰囲気を出し、正宗の背中を何度も強く叩いた。彼女は視線を愛紗に移し近づいた。そして、愛紗の頭の後ろに腕を回し肩を組むと彼女にだけ聞こえる声で囁いた。
「いい、ご主君じゃないか。励んでお仕えするんだよ」
愛紗は店主の言葉に軽く頷いた。
「店主、貴殿の名をお聞かせ願えるか?」
正宗は店主に声をかけた。
「今日から私のことは『女将さん』といいな」
「名も知らない人物の元では働けないだろ」
「はははっ、それを言うなら兄さんもだろ?」
店主は笑いながら答えた。
「失礼した。私は劉正礼。正礼と読んでくれ」
「私は呂定公。固苦しいのは好きじゃないから、私のことは定公でいいよ。知っての通り、私はこの『海陵酒家』の女将だ。正礼、明日からよろしく頼むよ!」
正宗は『呂定公』という名を力を使って調べ、彼の世界の歴史、三国志の時代において呉の名将と謳われた「呂岱」であることを知り驚愕した。呂岱は呉に四十歳で仕官したが山越討伐で名を挙げ、呉蜀間でもめた荊州三郡を武力掌握する際にも活躍した名将である。
「一ヶ月という短い期間だ
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