第137話 愛紗仕官する
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愛紗は申し訳なさそうに頭を垂れ正宗に挨拶を返した。美羽は彼女の正宗への態度からだいたいのことを察したのか口を噤んだ。ただ、正宗と愛紗を見比べる美羽の瞳は興味津々だった。
「気にするな。冀州での一件はお前に責ではない。責は全て桃香にある」
「いいえ。最終的に私は北郷を見逃しました。その罪は重いと思っております」
愛紗は重苦しい表情で俯き正宗に言った。
「もう過ぎたことだ。過去を穿り返したところで現在が変わるということではない。お前が私に負い目があるというなら、いずれ私に貸しを返してくればいい」
「正宗様、ご厚情感謝いたします」
「ここで働いている経緯は検討がついている。桃香の元を出奔したのであろう?」
愛紗は正宗の言葉に表情を固くした。明らかに話題に上げて欲しくないという表情をしていた。彼女は額に少し汗をかき目を泳がせていた。
「桃香に仔細は全て聞いている」
正宗の言葉に愛紗は深い溜息をついた。彼女の雰囲気から彼女が桃香の元を出奔したことを正宗には知られたくなかったことが伝わってくる。
「はぁ。全てお知りでしたか。正宗様の仰る通りでございます」
「愛紗、私に仕官しないか? 桃香も紆余曲折はあったが私に仕官した。今は役目を与え幽州へ送った」
愛紗は正宗の話に鳩が豆鉄砲を食らったな表情になった。自分の主人だった人物が何時の間にか正宗に仕官していのだから驚くのは当然のことである。
「桃香様は県令の職はどうされたのですか?」
「辞職した」
「辞職!? 私のせいでしょうか?」
愛紗は桃香の話を聞き途端に表情を暗くした。
「いや。私が辞職するように勧めた。後任が着任するまでのことは太守へ私が直々に依頼しておいたので問題ないだろう」
「そうですか。毎度毎度のことながら正宗様にはご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
愛紗は正宗に恐縮したように言った。
「そう思うなら私に仕官をしてくれないか? 勿論、無理強いはしない。直ぐに返事をくれずともいい。愛紗、お前の腕をここで腐らせるには惜しい」
正宗は愛紗に優しい表情で言った。彼としては愛紗に気持ちよく自分に仕官して欲しいのだろう。それが彼の態度からよく分かった。
愛紗も正宗の気持ちを察し万感の思いのようだった。しかし、彼女は表情が直ぐに暗くなった。
「正宗様のお言葉感謝し尽くしても尽きません。しかし、現実の苦しさ耐えられず主人の元を逃げ出した私のような者が正宗様にお仕えするなど許されようはずがございません」
愛紗は苦悩した表情で正宗に答えた。正宗は愛紗の話を黙って聞いていた。美羽は正宗と愛紗が話す内容を聞いている内に興味津々な表情から真面目な表示に変わっていった。
「この私が許す。お前は私に黙って
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