第137話 愛紗仕官する
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
になく七乃様は邪悪な笑みを浮かべ私に連れていくように頼んできましたんで」
それ以上、正宗は亜莎に何も聞かなかった。
正宗達は警備の兵達と侍女達を連れ立って途中寄り道をしながら美羽が贔屓にしている酒家へと向かうことになった。
「兄様もいかがです?」
美羽は食いかけの甜瓜(甘い瓜)を差し出してきた。彼女が食べている甜瓜(甘い瓜)は野菜等を売る露天の店主の親父から貰ったものだ。正宗は美羽から差し出された甜瓜(甘い瓜)を凝視し困った表情をする。明命と亜莎は二人の様子を興味津々で見ている。
「美羽、立ち食いはあまり行儀がよくないぞ」
「あははは。兄様、申し訳ございません。でも、せっかく冷えた甜瓜ですから、美味しいうちに食べたいと思ったのです」
美羽は無邪気に正宗に微笑みかけ、正宗にもう一度甜瓜を差し出してきた。美羽の善意を無碍に出来ず、正宗は甜瓜を手に取ると頬張った。明命と亜莎は顔を赤くして妙な声を上げていた。その様子に正宗は疲れた表情になっていた。
「これは本当に美味しい甜瓜だな」
正宗は驚いた表情で手に持つ甜瓜を見た。美羽は満足げな様子だった。明命と亜莎は正宗と美羽の後ろの方でなにやらこそこそと話し楽しそうにしていた。
先日襲撃を受けた場所を抜け小腹がすき始めた頃、目の前に朽ちた様なボロい家屋が目の前に見えてきた。その家屋を見て美羽は正宗の手を引っ張った。
「兄様、あそこです!」
美羽の言葉に正宗は目を疑う。正宗の目の前にはボロい家屋しかなかった。しかし、美羽の指す指先の方向は間違いなくボロい小屋だった。正宗はもう一度美羽のことを見る。美羽は無邪気な笑みを浮かべながらボロい家屋を見ていた。困惑する正宗は明命と亜莎へ視線を向けた。
「正宗様、あの年季の入った建物が美羽様が贔屓にしておられる酒家です」
「美羽様はあの店で出される『五目あんかけ飯』が大好きでして。よくあの店に出向かれます」
明命と亜莎から説明を受け、あのボロい家屋が美羽の贔屓の店だと理解した正宗は微妙な表情になった。
「兄様、店の外見で判断してはいけませんよ」
いつのまにか美羽が正宗の顔を覗き込むように見上げていた。少々表情をしかめていた。
「美羽、すまない。ぼ、年季の入った店だったのでつい見入ってしまっただけだ」
正宗は苦笑いをしながら美羽に弁解をした。
「仕方ないです。妾も初めてきた時は兄様と同じでしたからね」
美羽は正宗の言葉を聞き機嫌を直したのか、笑顔になり正宗の手を握り酒家の中に案内した。
明命と亜莎と兵士達と侍女達は襲撃を警戒して店の外で待機すると言い店内には入ってこなかった。
「妾じゃ。今日は護衛の者が外で待っているので、その
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ