神風と流星
Chapter1:始まりの風
Data.12 騎士の遺言
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「あ……ああ…………!!」
そしてこのキリトの引き攣った声が、俺に想像を事実と完全に認識させた。
鏡写しの人形か、はたまた双子のように。
俺とキリトの声がシンクロする。
「「だ……ダメだ、下がれッ!!全力で後ろに跳べ――――ッ!!!」」
声と同時に、コボルト王が垂直に跳ぶ。空中で体を限界まで捻り、武器に力を溜める。そして落下すると同時に、蓄積された力が深紅の輝きに変わり一刃の円となる。
軌道、水平。攻撃角度、360℃。
《カタナ》専用ソードスキル、重範囲攻撃技《旋車》。
六ヶ所で上がった鮮やかな赤色のダメージエフェクトは、血柱のようだった。
視界左に表示されるC隊の平均HPが半分を切ってイエローに突入する。個々のHPを確認する方法もあるが、そんなことをしなくても全員同じくらいのダメージを喰らっているのは火を見るより明らかだ。
範囲攻撃の分際でHPを半分以上持っていく威力も最悪だが、不幸はこれだけでは留まらない。
床に倒れこんだ六人頭上を、回転するおぼろげな光が取り巻いている。
一時的な行動不能状態――――スタンだ。
SAOに存在するバッドステータスの中ではそれほど恐ろしいものではないが、発動が即時なのと回復手段がないことが厄介で、それは今この時において最凶最悪な効果を発揮する。
本来なら誰かがすぐにでも援護に向かわなければならないが、誰一人として動けるものはいない。突然のことに、誰もが硬直している。
その間にコボルド王は長めの技後硬直から解放される。
「追撃が……!」
そこでようやく我に帰ったらしいキリトの声で、俺の硬直も解ける。同時に、前線の方でもエギル率いるA隊が援護に入ろうとした。
だがその一連の動きは、あまりにも遅すぎた。
「ウグルオッ!!!」
コボルド王が吼え、両手に握った野太刀を床スレスレの高度から斬り上げる。《カタナ》スキルの《浮舟》。そのターゲットとなったのは正面にいた騎士ディアベルだった。薄赤い光の円弧に引っ掛けられたように、銀色の金属鎧を着た体が宙に浮く。ダメージはさほどではないが、この技の真価はダメージに非ず。
狼にも似た巨大な口が、ニヤリと獰猛に笑った。
野太刀の刀身を、再び赤いライトエフェクトが包む。《浮舟》はスキルコンボの開始技で、あれを喰らったら迎撃ではなく体を丸めての防御態勢に入らなくてはならない。しかし、初見ではそんな反応が出来るわけもない。
ディアベルは空中で剣をかざし、ソードスキルによる迎撃を狙ったようだが、空中で行われた不安定なそれをシステムは開始モーションと認めず、剣をかざして体を伸ばしていたの騎士に
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